時間と手間をかけた研修システムを構築している不動産販売会社を取材したことがあります。中途採用で前職の仕事のやり方を踏襲したがる面倒な社員よりはマシ、と考えての取り組みのようでした。
ただ、そんな知見や余裕のある会社は一握りです。多くの会社は、未経験社員の採用に潜むリスクを覚悟しておくことが大事でしょう。
指導役になる社員へのフォローを忘れずに
たとえば、育成期間の長さ。取材した広告代理店では営業職の人材不足を解消するため、業界・経験不問で採用を実施。8人の営業経験なし、異業種からの転職組を採用。結果、1年後で(営業職として)一人前の成果が挙げられているのはわずか1人。残りの7人のうち、2人が退職。残る5人は
「時間をかければ、自分は営業として活躍できるはず」
と退職せずに在職中。以前に比べて、職を転々としたくない願望が高い人が増えており、営業成績が不振でも辞めない時代になりました。ただ、辞めない営業職たちが、いつになったら一人前になるか。業界経験者、営業経験者と比べて倍以上の時間がかかることは、覚悟する必要があるのではないでしょうか。
あるいは未経験社員の育成を任せた担当者の不満への対処。しっかりとした人材育成の仕組みがない会社では、人手不足で忙しいからと採用したはずが、その育成業務まで現場に任せざるをえないため、
「業界の慣習とか、仕事の進め方をゼロから教えてくれ」
と経験豊富な社員にOJTで指導を任せれば、その人にとっては本来の仕事にプラスアルファの負担となります。残念ながら、未経験社員を育てるには、現場で先輩社員が手取り足取り指導するのが近道。しかし、もともと忙しい人に、さらなる負荷がかかれば不満がたまるもの。人事評価などで加味するとか「このような人材育成は君しかできない。力を貸してほしい」と熱く語って、負担感を意気に感じてもらうケアが必要です。
このようなリスクがあっても、未経験社員の採用が、今後、ますます増えるのは間違いありません。できるかぎり、リスクに対する対策を準備して、転職者も会社側も、有意義な方向に進めていきたいものです。
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