TOEIC満点を目指すだけの人はダメ 日本の教育を変えるキーマン 千田潤一(2)

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 こんにちは、安河内哲也です。英語教育の専門家にお話を伺う本連載。今回、インタビューさせていただいた英語トレーニング法指導者の千田潤一先生は、長きにわたってTOEICの普及に尽力されてきました。しかし、せっかくスピーキングとライティング試験があるにもかかわらず、リスニングとリーディング技能を測定する部分だけが偏重され、990点満点を何回も獲得することが究極の目標のようになっている現状には疑問を呈しています。これからの日本の英語教育は、どこを目指せばいいのか? そしてTOEICとはどう付き合っていくのがベストなのか? 千田先生の英語との出合いや驚きの学習法なども伺いましたので、最後まで読んでくださいね!
(1)「英語は『覚えるまで音読する』」はこちら。
千田潤一先生との対談が続きます!

辞書をボロボロになるまで引いてはいけない理由

千田そんな環境が、私の入ったESSにはあったのです。そのときのESSの顧問だった西村嘉太郎先生は、当時としてはまだ珍しかったラボで指導してくれました。LL(language laboratory)とも呼ばれるもので、音声を中心に英語を学んだのです。VOA(Voice of America)のSpecial English (アメリカの国営放送が作るニュース。平易でゆっくりしたスピードが特徴)を聞いてディクテーションしたり、リピートしたりということを繰り返しました。

安河内福島大学はかなり進んでいたんですね!

千田潤一(ちだ・じゅんいち)
アイ・シー・シー代表取締役、英語トレーニング法指導者
1948年、岩手県生まれ。福島大学経済学部卒。タイムライフ、 AIU保険会社など実業界で英語を使った実務を経験した後、TOIECを普及促進する国際コミュニケーションズを経て現職。英語トレーニング法指導者の第一人者として、企業や学校などで講演を数多く実施。講演回数は4800回以上、受講者数は19万を超える。シリーズ累計50万部以上の「英会話・ぜったい・音読」(講談社)など、著書多数。英語学習のモットーは、The Key to success is starting and not stopping.(成功の鍵は始めることと辞めないことだ)。

千田そう、少なくとも英語教育は最先端を行っていたと思います。先輩から、英語劇を最初にやった大学も、福島大だと聞いたことがあります。

ラボ、ディクテーション、速読、クリエーティブライティング、ノートテイキング(メモ取り)、パブリックスピーチなど、今では当たり前になりつつある効果的な学習法を、西村先生のおかげで実践できたのです。中でも自分の英語力の構築にいちばん効いたなと思うのは、「速読」でした。これで訳読から脱皮できたからです。

西村先生が、辞書を引いている学生をしかる姿もよく覚えています。「わからない単語は、いちいち辞書を引くな。わからない単語は、読み飛ばして前に進め!」

安河内辞書を引くな?

千田そう。辞書など引かずに早く読めと言うのです。「ゆっくり読んだってわからないものを、何で早く読んでわかるようになるのですか?」って聞くと「つべこべ言わずに早く読め。そのほうがわかるんだから!」と、ストップウォッチで時間を測りながら、無理矢理に速読させられました。陸上部の練習みたいなものです。「英語はスポーツだ!」という感覚は、このあたりから感じ始めていました。

最初は半信半疑でしたが、やってみると大切ではない単語が消え、大切なキーワードが飛び込んできて、より早く正確に意味をとらえることができるという不思議な世界を体験できるようになりました。今考えると、不思議でも何でもないんですけどね。

半年で英検1級合格に導いた究極の訓練とは!?

安河内へぇー。先生の「速読」指導、先輩との「音読」がポイントだったのですね?

千田そうです。ただし、僕はESSに最後に入ったから、みんなに早く追いつきたいという気持ちがあったので、最初の半年間は自主勉強をしました。夕方6時から翌朝4時ぐらいまでの10時間を使ってね。

安河内訓練ですね! どんなことをしたのですか?

次ページ音読を続けていたら突然、英語が口から出てきた
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