TOEIC満点を目指すだけの人はダメ 日本の教育を変えるキーマン 千田潤一(2)

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安河内どうやって勉強をするかの解説から、実際に学習法がもう確立されていて、そのうえでトレーンングとして問題に取り組みながら、LとRの実力をアップさせていくということですよね。

この功績はとても大きいですから、北岡靖男氏と千田潤一先生には大いなる敬意を抱いていますが、その一方で今のTOEICの現状に、私は憂いを持っているのです。

千田実は私もそうです。

TOEICで990点満点を取ってはいけない!?

安河内発案者、伝道師が思い描かれたのとは、少し違う方向に向かっているように感じませんか?

千田ちょっと違った方向に暴走していると思います。北岡さんは「満点だけを追いかける人だけは作らないようにしよう」といつも言っていましたから。

実は私も英語の資格テストを、10ほど受けてすべて合格した時期があったのです。TOEICは955点でした。「北岡さん、次は満点取りますから」って言ったら、すごい勢いで怒られたんです。「そういう人間を作らないためにTOEICを作ったんだ!」と言われてね。

「満点を取って喜んでいてはダメだ。指揮者の小沢征爾さん。TOEIC受けたら600点ぐらいだろう。でも、彼には指揮という仕事があって、それを英語で立派にやり遂げている。英語はそれぞれの目的に応じたレベルに到達すればいいんだ。TOEICは最低限の指標を示すためのminimum standard(最低基準)で、maximum standard(上限基準)ではない」と答えたんですね。

minimum standardということは、事あるごとに繰り返しずっと口にしていましたね。でも、今は誰もそんなことは言わなくなってしまった。関係者もね。

安河内minimum standardを超えればOKだと?

千田そう。「高いスコアの人が偉いなんてこともない。高ければ高いほどいいわけではない。満点がスゴいわけでもない。そういう風潮にならないように君を採用したのに、君がその最前線に向かっていってどうするんだ!」と激怒されたというわけなのです。

(構成:山本 航、撮影:上田真緒)

※次回は12月24日(水)に掲載します。

安河内 哲也 東進ハイスクール・東進ビジネススクール講師

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やすこうち・てつや / Tetsuya Yasukochi

1967年福岡県生まれ。上智大学卒。予備校講師、教育関連機関での講演などで実用英語教育普及に従事。著書に『子どもの英語力がグンと伸びる最強の学習』(扶桑社BOOKS)など。

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