安河内:どうやって勉強をするかの解説から、実際に学習法がもう確立されていて、そのうえでトレーンングとして問題に取り組みながら、LとRの実力をアップさせていくということですよね。
この功績はとても大きいですから、北岡靖男氏と千田潤一先生には大いなる敬意を抱いていますが、その一方で今のTOEICの現状に、私は憂いを持っているのです。
千田:実は私もそうです。
TOEICで990点満点を取ってはいけない!?
安河内:発案者、伝道師が思い描かれたのとは、少し違う方向に向かっているように感じませんか?
千田:ちょっと違った方向に暴走していると思います。北岡さんは「満点だけを追いかける人だけは作らないようにしよう」といつも言っていましたから。
実は私も英語の資格テストを、10ほど受けてすべて合格した時期があったのです。TOEICは955点でした。「北岡さん、次は満点取りますから」って言ったら、すごい勢いで怒られたんです。「そういう人間を作らないためにTOEICを作ったんだ!」と言われてね。
「満点を取って喜んでいてはダメだ。指揮者の小沢征爾さん。TOEIC受けたら600点ぐらいだろう。でも、彼には指揮という仕事があって、それを英語で立派にやり遂げている。英語はそれぞれの目的に応じたレベルに到達すればいいんだ。TOEICは最低限の指標を示すためのminimum standard(最低基準)で、maximum standard(上限基準)ではない」と答えたんですね。
minimum standardということは、事あるごとに繰り返しずっと口にしていましたね。でも、今は誰もそんなことは言わなくなってしまった。関係者もね。
安河内:minimum standardを超えればOKだと?
千田:そう。「高いスコアの人が偉いなんてこともない。高ければ高いほどいいわけではない。満点がスゴいわけでもない。そういう風潮にならないように君を採用したのに、君がその最前線に向かっていってどうするんだ!」と激怒されたというわけなのです。
(構成:山本 航、撮影:上田真緒)
※次回は12月24日(水)に掲載します。
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