TOEICの満点は、990点でなく1390点 韓国の英語力が日本を突き放した理由(上)

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教育が、長期的な経済力に大きな影響を与えることは言うまでもない。日本の教育全般は世界でも高い水準を維持している。しかし、英語教育だけはグローバル化の要請に応えることができていない。このまま英語教育を放置すれば、今後の経済に大きなマイナスとなることは確実である。
英語教育の改革をどんどん進め、若者の英語力を高めているアジア諸国に追いつくにはどうすれば良いのか。国家的な問題としての英語教育を考え、具体的かつ即効性のある改善策を模索する。それがこの連載「英語教育2.0」のコンセプトである。

 

こんにちは、安河内哲也です。私は20年以上英語を教えていますが、日本のうまくいっていない英語教育をこのまま放置しておくと、大変なことになるという大きな危機感と責任を感じています。

どうして日本の英語教育はうまくいっていないのでしょうか?本連載では、私なりの見解を述べるとともに、その打開策もじっくり探っていきたいと思っています。

まず初回は、ここ15年ほどで日本に大きく水をあけ、瞬く間に「英語ができる国」へと成長した韓国の英語教育改革についてお話します。

韓国は9位、日本は27位

1997年頃までは日韓は英語が苦手な国として、世界の2大双璧といえるほどでした。英語ができない国の代名詞として、両国が欧米人から揶揄されることは少なくありませんでした。私が韓国を初めて訪れたのは87年ですが、確かに当時は英語がほとんど通じませんでした(むしろ日本語をしゃべれる人のほうが多かった)。

その頃は、「日本語も韓国語も語順が英語とまるで違うのだから、できなくて当たり前」と両国とも半ば開き直っていた風潮さえありました。しかし、英語の教育内容をがらっと変えた韓国は着実に英語力がアップ。今では「韓国人は英語ができ、日本人はできない」というふうに世界の認識も変わってきています。

その実力差を示す一例が2010年のアジア30カ国のTOEFLスコアの平均点ランキングです。1位シンガポール(98点)、2位インド(92点)、3位マレーシアとフィリピン(88点)と、英語が公用語または準公用語の国がトップにきている中で、韓国は香港と並んで81点を獲得し、9位に食い込んでいます。

一方の日本は、70点で27位。各国で受験者数がかなり違うなど、一概に比べることはできませんが、日韓の差に関しては、かなり正確に表れていると言えます。TOEICテストでも、日本の平均スコアが500点台後半であるのに対し、韓国は600点台前半で50点前後の開きがあるようです。

では、韓国は何をしたのでしょうか? 

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