TOEICではもう限界? 転換期迎えたビジネス英語
TOEICスコアを「昇進・昇格の要件にしている」企業は「将来は要件にしたい」も合わせて約5割に達し、「採用時に考慮している」企業は「将来は考慮したい」も合わせて7割にもなる--。TOEICがビジネスパーソンおよびその予備軍に圧倒的な人気を誇るゆえんだ。現在、2700の企業や団体が採用し、2008年度は170万人が受験した。
しかしその人気の一方で、企業の間からはこんな声も聞こえてくる。「TOEICの点は高いのに、ビジネスの現場では使いものにならない」と。この超人気英語資格にいま何が起きているのか--。
「TOEICは対策次第で点数を増やせる」と明言するのは、TOEICを10回以上受け、最高時で900点のスコアを持つ40代男性だ。「何度も受けているうちに出題のパターンが見えてくる。そのパターンも20種類くらいに限られているので、自分の読みがすべて当たれば、実際の実力プラス70~80点は取れる。しかし職場では“ネイティブ並みに英語ができる”と勘違いされ、後で苦労した」と苦笑する。
反対に「どんなに英語力のある人でも、いきなり受けたら700点くらいしか取れないのでは? 」と語るのは、海外でMBAを取得した30代女性だ。TOEICには独特の技術が必要だという。
「初めてヒアリングの問題を受けたときには、写真の中の人物についての解説が延々と続き、“いったい何が始まるのだろう”と途方に暮れているうちに終わってしまった」
しかしコツがつかめると、「写真を見た段階であらかじめ答えの察しがつく」というのは前述の男性と同じ。「そのスコアアップを純粋な英語力アップと言えるかは疑問です」。
かつてビジネスパーソンの英語力は、世界共通のTOEFLや英検、あるいは企業が独自に作成した試験などによって測られていた。しかし、1979年に当時の通商産業省などの肝入りでTOEICが登場すると、ビジネス英語に特化した点と、スコア評価による利便性が受け、企業が競って導入。就職対策の学生などにも裾野が広がっていった。