大学入試の英語が変わる! 英語教育改革の切り札「TEAP」がついに登場

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教育が、長期的な経済力に大きな影響を与えることは言うまでもない。日本の教育全般は世界でも高い水準を維持している。しかし、英語教育だけはグローバル化の要請に応えることができていない。このまま英語教育を放置すれば、今後の経済に大きなマイナスとなることは確実である。
英語教育の改革をどんどん進め、若者の英語力を高めているアジア諸国に追いつくにはどうすれば良いのか。国家的な問題としての英語教育を考え、具体的かつ即効性のある改善策を模索する。それがこの連載「英語教育2.0」のコンセプトである。
上智大学のグローバル人材育成講座の授業風景(写真:梅谷秀司)

こんにちは、安河内哲也です。2012年も、日本の英語教育の増進のために少しでも貢献できればという思いで、スピーキングテストの普及活動を頑張ってやってきましたが、今年も残すところ数週間を切りました。年末も、今年の総仕上げとして、まだまだ頑張りたいと思います。

今回は日本の英語教育を一気にプラスの方向に転換する可能性のある希望のプロジェクトについてお伝えします。その前に、ざっと現在の問題点の確認をしておきたいと思います。

偏った入試が負の連鎖を起こしている

前回の連載でも述べたとおり、私は、日本の英語教育がうまくいっていない最大の原因は、大学入試の「偏り」だと思っています。大学入試がそんなに大きな影響力を持つのか、と不思議に思う方もいらっしゃると思いますが、大学入試にはものすごい影響力があるのです。

建前を抜きにして言うならば、日本では18歳までの教育の主目的は、子供をいい大学に入れることです。そして、それまでの学校・塾・予備校の英語教育は、大学入試の内容から逆算して作られています。これをテストのウォッシュバック効果と言います。ウォッシュバック効果とは、簡単に言うと「目標となるテストがそれまでの教育手法に与える影響」のことです。

日本という島国では、中高生は生活の中で、英語を使わなければならない必要性を感じることがほとんどありません。そんな中で、彼らが英語を学ぶ必要性を創出しているのが大学受験です。

高校のランクは大学進学実績によって決められます。高校の授業では受験対策をやり、副教材もほとんどが受験用の参考書です。塾・予備校は当然受験対策ばかりをやります。学校のトップも父母も進学実績ばかり気にしています。低学年時にコミュニケーションを学んでいた学生も受験が近づいてくるにつれて、英語学習は受験一色に染められます。

英語の技能分野を大まかに分けるとすれば、L(リスニング)、R(リーディング)、S(スピーキング)、W(ライティング)に分けることができます。また、日本では重視される、T(和訳Translation)という技能もあります。その前段階としてG(文法Grammar)やV(語彙Vocabulary)があります。

日本の入試問題は、RとTに異常に偏っています。Sを試す学校はほとんどありません。

受験ではRやTやGが中心なので、学校や予備校でもそれらを中心に教えることとなります。さらに、教えやすいG(文法)の割合が肥大化しています。また、読解に関しても、入試ではR(読解←英文を英語のまま理解する)の割合が大きいにもかかわらず、教室では、教えやすい T(和訳)ばかりやっているというケースも見受けられます。

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