《うさぎの島》はかつて「地図から消された島」だった。戦後80年、絵本『うさぎのしま』が描く戦争の記憶と環境問題。広島県・大久野島

大久野島のうさぎ(写真:柴田うさぎ事務所 / PIXTA)
瀬戸内海に浮かぶ広島県の小さな島「大久野島」。現在は約500羽(2025年4月)のうさぎが暮らし、「うさぎの島」として多くの観光客に親しまれています。
大久野島は、第二次世界大戦中に極秘裏に化学兵器の毒ガスが製造され、「地図から消された島」でした。当時、毒ガスの開発とともに、白いうさぎが実験動物として使われていました。
絵本『うさぎのしま』は、そんな島に刻まれた戦争の記憶と現代にも続く環境問題という重層的なテーマを、日本絵本賞受賞作家・たてのひろしさんと絵本作家・近藤えりさんが、柔らかなパステル画で繊細かつ力強く紡いだ作品です。
本記事では、絵本から一部を抜粋し、兼子伸吾・福島大学教授による解説を踏まえながら、毒ガス工場としての歴史や島のうさぎの由来、現状についてご紹介します。
絵本『うさぎのしま』のあらすじ
<絵本のあらすじ>
広島県大久野島。かわいいうさぎたちに会うために、毎日たくさんの人がこの島を訪れます。
一組の親子が白いうさぎを見つけました。
「あの子、白いね」
「あの子のおかあさんも、白い?」
何気ない一言が、封印された過去を呼び覚ます。
時は、第二次世界大戦へー。
当たり前のことですが、私たちがここにいるのは、お父さんとお母さんが私たちを産んでくれたからです。

(画像:絵本『うさぎのしま』)
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