97年に通貨危機で国家破綻の寸前までいった韓国は、経済の立て直しのために、対外貿易の拡大が不可欠になりました。そこで国が英語を使える(話せる)人材育成に本腰を入れたわけです。海外に物を売りに行くには英語が話せなければなりませんからね。
具体的には大学受験の際、英語の試験に様々な実用的な英語試験を使用することを促し、個別の大学が英語の問題を作ることをやめるように誘導しました。
日本も韓国も受験に向かって勉強するのは同じです。要は韓国では、英語を実用的に使いこなす上で必要になってくる技能が、受験で試されるようになったため、非実用的な英語を勉強しなくなり、受験英語のムダがそがれ、英語力の底上げがされたわけです。
これまでは大学入試に、TOEFLやTEPS(Test of English Proficiency developed by Seoul National University)のスコアが使用されてきましたが、今年からNEAT(National English Ability Test/国家英語能力評価試験)が導入されます。
これは、韓国の英語教育改革のいったんの最終形であり、この改革によって、韓国の国民英語力はさらに劇的に向上することは必至です。
NEATは「韓国のTOEFL」と一部で呼ばれるもので、1、2、3級の3種類があります。簡単に説明すると1級はビジネス英語で、2級が大学で必要な学術英語、3級は一般の日常英語となります。級の違いは難易度に加えカテゴリーの違いです。レベル、目的は違っても、3つの級とも4技能が満遍なく試される試験という部分は共通しています。
全国実施が目標とされていて、2級は2015年以降、大学入試の唯一の試験になるだろうと目されています。世界中の様々な英語試験のいいとこ取りをした、英語テストシステムの1つの理想型とも言える試験になっていると思います。
サムスンは「従来型TOEIC」から卒業
また、韓国の英語力が伸びた背景のもう1つには、TOEICスピーキング(S)テストの普及も挙げられます。Sテストが普及したのは、サムスン電子の英断によると言えるかもしれません。韓国も従来は日本と同じようにマークシート方式でLとRの技能のみを推し量る990点満点のTOEICテストの点数を採用の基準にしていました。
900点を採用基準としてきたサムスンですが、LRでは世界で活躍できる優秀な社員を採れないということに気付き、採用条件からはずしました。現在、サムスンはSテストの点数で採用するようになり、多くの企業が後に続いています。
結果Sテストの受験者は、日本では年間約1万人にとどまっているのに対し、韓国では今年25万人になると見込まれています。
このTOEICのSテストは、日常英会話の技能が試されるのではありません。論理的にプレゼンを行ったり、資料の情報を読み取って正確に説明したり、口頭で問題解決の提示を行うなど、国際ビジネスで最も重要な力を試すテストなんです。
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