「奨学金400万円」大したことないと言う男性の真意 特別な才能がなくても貧困家庭から脱出できる

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週に6日は、大学終わりの18時頃から深夜1~2時頃までバイト。月に10万円ほどは稼げたが、半分は家賃に消えた。

「周りの友人と比べて、親の経済力のなさを痛感することは多かったです。周りの友達がやっていたような、留学や資格取得のための勉強はできなかったですし、飲みに行ったり、友達とダラダラしたりもあまりしていなかったと思います。あと、友人たちは親に出してもらっていた、運転免許取得やゼミでの海外調査の旅費なども、自分で負担しないといけませんでした」

授業料が免除にならなかった時期も

また、4年間の学生生活の中では、授業料が免除とならなかった時期もあった。

「入学からしばらくは授業料が免除になっていたのですが、2年生の頃に一回免除にならなかったことがありました。その際は奨学金から出しましたが、その後も免除にならなかった場合に備えて、奨学金を少し貯めておかなければなりませんでした」

各大学が独自に用意している授業料免除・減免の制度は、経済的な理由や学業成績などを踏まえて審査される。その後はふたたび授業料免除となった森本さんだが、大きな不安があったのは間違いない。

(なお、2020年からは「高等教育の修学支援新制度」がスタートしているので、住民税非課税世帯の子どもたちなどは、大学独自の授業料免除の制度と併せてチェックしてみてほしい)

しかし、そうやってお金の面での不安を抱えつつも、苦労して入った大学生活は、今振り返っても、とても充実したものだったようだ。

「大学時代を振り返ると『楽しかった』という印象しかありません。野球サークルに所属して友人にも恵まれていましたし、高校や大学の友人たちと旅行に行くこともありました。地方ではなかなか出会えない文化があるのもうれしく、映画や音楽にもお金を使っていました。そのぶん、貯金は全然なかったですけど」

3年生になってからは、学業成績の優秀さが認められ、日本学生支援機構の奨学金に加え、民間の財団の給付型奨学金を月に3万円もらえることに。この給付型奨学金は、給付対象の指定校が決まっていたそうで、ここでも東京の国立大学に進学したことが有利に働いた形だ。

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