「奨学金400万円」大したことないと言う男性の真意 特別な才能がなくても貧困家庭から脱出できる

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派手さはないかもしれませんが、『特別な才能がなくても、ある程度がんばれば、奨学金を使って地方の貧困家庭から脱出できる』という、極めて身近な例もあるということを、これから奨学金を借りようか悩んでいる人たちには伝えたいですね」

「理想」はもちろんあるものの…

そう語る森本さんに、教育関係者ということで現在の奨学金のあり方についても質問してみた。奨学金について論じる時、SNSなどでは「日本は教育にかける費用が少ない」「大学の学費をもっと安くしたり、給付型の奨学金を増やすべきだ」といった声が出るが、それについてはどう思っているのだろうか?

「正論だとも思いますし、理想としてはそのほうがいいと思います。でも、今の日本の財政状況などを鑑みると、高齢化も進んでいて、社会保障の負担も増えていますよね。大学の授業料が無料になることが理想的だとは思いますが、やはり現実的ではない。

そういう状況の中では、貧困世帯に生まれた子どもにとって、奨学金というのはひとつの有力な選択肢だと思うんです。大学の授業料が年々上がっているとはいいつつも、まだなんとかなる額ではありますし、アメリカなどに比べると低いですしね。

また、今の高校生には数百万という金額は、とても大きく見えるかもしれませんが、大学に進学して、それなりの企業に入ることができれば、ぶっちゃけ大したことないんですよね。むしろ、今の環境を抜け出したい高校生は、勉強をがんばって、私のように東京の国立を目指すのはいい選択肢のひとつだと思います」

森本さんの語る言葉はどれも正論だろう。現実が、より理想的なものに変わるより前に、まず自分の努力でなんとかしようとする……という姿勢は、厳しい社会を生きるひとりの人間として、素直に尊敬に値すると感じた。

ただ、「自分に甘い」を自認する筆者としては、彼が語る「ある程度」「それなりの会社」といった言葉が、ややハードル高く感じられたのも事実であった。

また、森本さんしかり、本連載には予備校などに通わず、難関大学に合格している人が登場しているが(たとえば連載5回目に登場してくれた男性などはそのひとりだ)、大学受験を経験した人であれば、それがいかに大変なことか理解できるだろう。冷静に考えて、彼らはとても、能力が高い。

もしかすると、今はかつてなく「普通の努力」のハードルが上がっている時代なのかもしれない。ただ、それでも森本さんのエールは、少なくない高校生の胸に響くはずだ。

本連載「奨学金借りたら人生こうなった」では、奨学金を返済している/返済した方からの体験談をお待ちしております。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。
千駄木 雄大 編集者/ライター

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せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。編集者としては「驚異の陳列室『書肆ゲンシシャ』の奇妙なコレクション」(webムー)なども手掛ける。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。毎月、南阿佐ヶ谷トーキングボックスにて「ライターとして食っていくための会議」を開催中。

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