「奨学金400万円」大したことないと言う男性の真意 特別な才能がなくても貧困家庭から脱出できる

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「塾や習い事なんてやらせてもらえなかったし、旅行にもあまり行った記憶はありません。だからといって、『貧乏で家庭内が荒れていた』とか『父が暴れている』といった家庭でもなくて、『お金はないけど、家族仲はいい』という雰囲気でしたね」

大学進学を反対されるわけではなかったが、学費などは出してもらえない。そこで、森本さんは学費・家賃・生活費などをすべて自分で出す約束で、東京の国立大学に進学することを決意する。

奨学金の審査に落ちてショック

本連載に対するSNSなどでの反応には、地方から都会に出た人に対して「地元の国公立に行ったほうが、安く済んだのではないか?」といったコメントが寄せられることがある。森本さん自身、「もともと、漠然と東京に行きたいなとは思っていました」とのことだが、それに加え、現実的な考えも背景にあったようだ。

「東京の国立を選んだ理由のひとつとして、『授業料免除の制度を使いたい』という気持ちがありました。ただ、自分と同じように貧しい家出身の子どもも少なくない地方の国立大学だと、収入が低いだけでは免除の対象に選ばれにくいと考えると、東京の国立大学には地方の名士や、子どもの教育にお金をかけてきた家庭の学生がたくさんいる。だから、地方から出てきた私は免除の対象になりやすいと考えました」

実際、入学した直後、授業料は免除に。しかし、その一方で、想定外の出来事もあった。

「授業料免除の制度に応募する一方で、日本学生支援機構の奨学金(第一種・無利子)にも応募していたのですが、なぜか不採用だったんです。当時はもう、相当落ち込みましたね。国立であれば学費も安いし、『バイトすれば何とかなるだろう』と考えていたんですけど、でも、実際に上京して一人暮らしを始めてみると想像以上に大変で……。『奨学金がないなら、もう地元に帰るしかない』と思い詰めていた時期もありました」

その後、幸いにも2回目の応募で、第一種と第二種(有利子)の審査に通ることができたという森本さん。無事に奨学金を借りられたのはいいものの、生活費・家賃はすべて本人の負担だ。そのため、バイトに勤しむことになる。

次ページ週6でバイト、忙しくも充実した日々
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