北京五輪の中国「ゼロコロナ政策」終わりの始まり ありのままを直視し、精査する姿勢が大切だ

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北京冬季五輪のクローズドループ方式

ゼロコロナ政策の実質的な調整が進みつつある中、北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会(北京大会)が中国でオミクロン株の感染拡大につながらないか、世界が注目している。

中国の国境管理は、世界でもっとも厳しい。まずフライトがない。北京や上海、香港など主要都市への直行便は多くが運航停止となり、海外からの渡航者は大連や広州などから入国する必要がある。入国に際してはワクチン接種完了後14日間を経たあと、搭乗2日前以内のPCR検査と抗体検査のダブル検査で陰性証明を取得し、オンラインで「健康コード」の申請が求められている。さらに21日間の隔離観察を満了し、入国23日目になってようやく北京市への移動が可能になる。

こうした厳しい水際措置を北京五輪の選手や大会関係者に課すことはできない。したがって北京大会のプレーブックでは、ワクチン2回接種、できれば3回接種により、隔離を免除することとした。東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京大会)の「バブル方式」を踏襲して、北京大会では「クローズドループ方式」が実施されている。毎日、検査を実施するのはバブル方式と同様だが、ワクチン接種完了が原則必須であり、移動は北京大会組織委が提供する交通手段に限られ、選手村での行動制限も非常に厳しい。

北京大会は東京大会を下敷きにしたコロナ対策を実施している。それは、東京大会のバブル方式が成果を挙げたからである。東京大会では、選手および大会関係者に対しワクチン接種を奨励するとともに、出発前の検査陰性証明を求め、入国後も定期的にスクリーニング検査を実施した。

開催前は随分と心配されたが、結果的に東京大会の「バブル方式」は有効に機能した。海外からの入国者5万4250人のうち261人(0.48%)を陽性者として検出したものの、検疫や保健所による迅速な隔離により感染拡大を防いだ。選手村や競技会場でクラスターは発生しなかった。大会関係者などから東京など市中に感染が広がった事例も認められなかった(東京2020組織委員会「東京2020大会の振り返りについて」)。

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