第2次安倍政権の官邸運営は基本に忠実だった
権力の所在はどこにあるのか。ここ4半世紀、政治改革が断続的に行われ、官邸主導が強められてきた。だが、首相官邸の内部は、容易にはうかがい知れない。
アジア・パシフィック・イニシアティブでは、史上最長となった第2次安倍晋三政権について54名へのインタビューに基づき徹底した分析を行い、2022年1月に『検証 安倍政権』(文春新書)を出版した。筆者は本書の執筆において官邸主導を担当し、政治権力の「奥の院」を分析した。
そこからみえてきた1つは、第2次安倍政権が首相―官房長官―官房副長官というラインを重視する、基本に忠実な官邸運営に努めたことである。内閣府の経済財政諮問会議を活用した小泉純一郎政権とも、政治家の首相補佐官を重用した第1次安倍政権とも、明らかに違うスタイルである。
その表れは、安倍首相、菅義偉官房長官、政務の官房副長官(2名)、事務の杉田和博官房副長官、今井尚哉首席秘書官の6名からなる正副官房長官会議を毎日開催し、意思統一に努めたことだ。「委縮」や「忖度」を招いたといわれる幹部官僚人事も、菅官房長官と事務の杉田官房副長官の2人を中心に行われた。
もう1つ重要だったのは、それぞれ安倍首相、菅官房長官との個人的な関係が深い長谷川榮一氏、和泉洋人氏という官僚出身の首相補佐官を活用したことである。今井秘書官(2019年から首相補佐官を兼務)を含めて官僚出身のスタッフが、首相や官房長官の委任を背景に各省庁に対して直接指示を出し、政策決定の面でも強力な官邸主導を実現した。
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