「安倍官邸の功罪に学ぶ岸田官邸」が内包する課題 内部の結束力を高め官邸主導を機能させられるか

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岸田官邸は安倍官邸とどう違うのか(写真:Yoshikazu Tsuno/Gamma-Rapho/ Bloomberg、Franck Robichon/EPA/Bloomberg.jpg)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

第2次安倍政権の官邸運営は基本に忠実だった

権力の所在はどこにあるのか。ここ4半世紀、政治改革が断続的に行われ、官邸主導が強められてきた。だが、首相官邸の内部は、容易にはうかがい知れない。

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アジア・パシフィック・イニシアティブでは、史上最長となった第2次安倍晋三政権について54名へのインタビューに基づき徹底した分析を行い、2022年1月に『検証 安倍政権』(文春新書)を出版した。筆者は本書の執筆において官邸主導を担当し、政治権力の「奥の院」を分析した。

そこからみえてきた1つは、第2次安倍政権が首相―官房長官―官房副長官というラインを重視する、基本に忠実な官邸運営に努めたことである。内閣府の経済財政諮問会議を活用した小泉純一郎政権とも、政治家の首相補佐官を重用した第1次安倍政権とも、明らかに違うスタイルである。

その表れは、安倍首相、菅義偉官房長官、政務の官房副長官(2名)、事務の杉田和博官房副長官、今井尚哉首席秘書官の6名からなる正副官房長官会議を毎日開催し、意思統一に努めたことだ。「委縮」や「忖度」を招いたといわれる幹部官僚人事も、菅官房長官と事務の杉田官房副長官の2人を中心に行われた。

もう1つ重要だったのは、それぞれ安倍首相、菅官房長官との個人的な関係が深い長谷川榮一氏、和泉洋人氏という官僚出身の首相補佐官を活用したことである。今井秘書官(2019年から首相補佐官を兼務)を含めて官僚出身のスタッフが、首相や官房長官の委任を背景に各省庁に対して直接指示を出し、政策決定の面でも強力な官邸主導を実現した。

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