日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪 債務残高だけに集中するのは大きな間違いだ
日本の財政赤字は「氷山に向かうタイタニック号」のようなものだという矢野康治財務事務次官の発言で唯一新鮮だったのは、選挙で選ばれた政府の政策を、水面下での会話ではなく、影響力のある『文藝春秋』誌上で厳しく批判したことだ。
約半世紀前、1978年から財務省は政府が抜本的な歳出削減と増税をしない限り「日本は崩壊ししかねない」と、首相を脅し続けて自分たちのいいなりにしようとしてきた。最近は国債市場の暴落を”ネタ”にしている。財務官僚たちは影で、首相を次々と「犠牲」にすることで消費増税を繰り返せると影でジョークを言っているほどだ。
かたくなに主張を改めようとしなかった
仮に財務省の警告が正しければ、それは国益のためだったと言えるだろう。しかし現実には、財務省は何度も間違ってきたし、かたくなに主張を改めようとしなかった。公平のために言うと、確かに財務省の見解は多くの高名なエコノミストの間でも共有されている。2012年にはエコノミスト2人が、財政緊縮策を実施しなければ、2020年から2023年までの間に国債の暴落が起こると予測していた。
1990年代半ば、財務省は橋本龍太郎首相を説得して消費税を3%から5%に引き上げさせた。引き上げ幅は健全な経済状態では問題にならないほど小さかったが、不良債権の肥大化により日本の体力が低下しているというアメリカ政府の指摘が無視されていた。
案の定、1997年4月の増税により、日本経済は深刻な不況に陥り、銀行危機はさらに拡大し、不況はさらに深刻化した。1998年3月、ロバート・ルービン財務長官が宮沢喜一蔵相との私的な会談で3%への引き下げを求めたところ、加藤紘一自民党幹事長が怒りを露わにした。「消費税導入のためにどれだけの首相が犠牲になったか……この発言は非常に不愉快だ」。
その数カ月後、参議院選挙で自民党が予想外の敗北を喫し、橋本首相は辞任せざるをえなくなり、犠牲者に名を連ねた。財務省もまた、予算と銀行債務に関する失敗で罰せられた。野党が参議院を制していたため、政府は野党の銀行救済への同意を得るために、銀行問題に関する財務省の介入を廃止することを黙認しなければならなかったのである。
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