「安倍官邸の功罪に学ぶ岸田官邸」が内包する課題 内部の結束力を高め官邸主導を機能させられるか

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重量級の首相秘書官とはいえ、第2次安倍政権のように首相官邸が各省庁を一方的にコントロールすることはないであろう。首席秘書官の嶋田氏は、第2次安倍政権の今井氏と同じ経産省出身だが、事務次官を務めた。それ以外の官僚出身者も、各省庁に戻り、事務次官など枢要なポストに就くことになる。したがって、各省庁の秩序は尊重されるはずだ。

第2次安倍政権を反面教師に

以上にみた首席秘書官の今井氏と嶋田氏、官僚出身の補佐官の和泉氏と森氏の比較は、事務の官房副長官にも当てはまる。第2次安倍政権の杉田氏は警察庁で警備局長だったのに対して、岸田政権の栗生俊一氏は警察庁長官の経験者である。こうした官邸官僚人事からは、首相官邸が各省庁を強力に統制した第2次安倍政権を反面教師に、ある程度、ボトムアップと調整を重視する姿勢がうかがわれる。

首相官邸と自民党の関係にも、同様の傾向を見いだすことができる。第2次安倍政権の場合、次第に派閥の意向を尊重する色彩を強めたが、それでも官邸が党をグリップしようとする強力な意志を有していた。幹事長ポストには、石破茂氏、谷垣禎一氏、二階俊博氏と安倍首相と一定の距離がある政治家を起用したが、いわば監視役として幹事長代行に細田博之氏、下村博文氏、萩生田光一氏、稲田朋美氏と、自らに近い議員を据えてきた。岸田政権の場合、幹事長代行は梶山弘志氏であり、幹事長の甘利明氏、茂木敏充氏にも近い。

岸田首相は麻生太郎副総裁や茂木幹事長と会い、意見交換を重ねている。松野官房長官を交えた4者会談も少なくない。しかも、首相官邸に呼びつけるのではなく、党本部を含めて外に出かけている。その下で、当選同期でもある松野官房長官、梶山幹事長代行、高木毅国対委員長の3者が緊密に連絡をとり、実務的に詰めている。

こうした調整を重視する岸田政権のあり方は、首相が率いる宏池会が第4派閥であり、安倍派に加えて麻生派や茂木派の協力が不可欠であることが一因とみられる。しかし、それとともに、岸田首相が自民党総裁選のなかで「政高党高」を明確に打ち出していたことも想起されるべきである。

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