北京五輪の中国「ゼロコロナ政策」終わりの始まり ありのままを直視し、精査する姿勢が大切だ

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北京五輪はオミクロン株の感染拡大につながらないのだろうか(写真:Qilai Shen/Bloomberg)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

オミクロン株が世界で、そして中国でも猛威を振るうなか北京冬季五輪が開幕した。移動の自由を厳しく制限してきた中国の「ゼロコロナ政策」は正念場を迎えている。

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感染前や無症候でもステルスでひろがる新型コロナ感染症の封じ込めは、きわめて難しい。切り札として期待された中国産ワクチンは有効性でmRNAワクチンに劣り、中国国民の命と健康を守るにはあまりに心許ない。また、頻繁なロックダウンはグローバルサプライチェーンを寸断させるリスクもはらむ。感染力の強いオミクロン株の出現により、ゼロコロナ政策の継続を懸念する声が世界中で上がっている。

厳しい水際対策を続けてきた中国であったが、1月8日には天津で、1月15日には北京でもオミクロン株の市中感染が検出された。こうした状況下で、中国は北京冬季五輪を開催し、世界から選手団や大会関係者、メディアを迎え入れている。中国のコロナ対策を、われわれはどう見たらいいだろうか。

はじまりは武漢モデル

中国は世界でもっとも厳しい国境管理とともに、武漢のロックダウンをはじめ国内でも人々の移動の自由を制限してきた。地域で感染者がひとりでも見つかれば、感染者を隔離し、感染発生地域をロックダウンし住民の移動を制限する。さらに大規模なPCR検査を実施し、健康コードなどアプリや顔認証といったデジタル監視技術も駆使し、感染の封じ込めを目指してきた。

こうした「武漢モデル」(人民網日本語版)は新規感染者数を低い水準に保ち、中国各地で展開されてきた。ローカルな自治組織である社区レベルでの住民監視も、感染制御を支えた。

中国の「ゼロコロナ政策」

2021年8月、中国国家衛生健康委員会(日本の厚生労働省に相当)が「ダイナミックな感染ゼロ政策」をコロナ対策の基本方針として採用した。この頃から中国当局や国営メディアによる対外発信で「ゼロコロナ政策」(Zero-COVID policy)という言葉が見られるようになった。

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