しかし北京冬季五輪は、感染力が強いオミクロン株に苦戦している。まだ北京大会は始まったばかりだが、検疫や日々の検査により、選手や大会関係者から353人(2月4日時点)の陽性者が検出されている。北京大会がオミクロン株の中国への流入につながらないよう、中国当局はなりふり構わずクローズドループ方式の徹底をはかっている。
2つのエコーチェンバー
中国のコロナ対策をめぐる現状は、閉じられた言論空間がエコーチェンバーとなり、中国当局もその国民も、武漢モデルへの過剰な自信を制御できていないように見える。中国政府は国際的な「話語権」を高めるべく、対外宣伝において「ゼロコロナ政策」という言葉を使ってきた。
こうした中で開催される北京冬季五輪が重視するのは、中国自身がすでに軌道修正してきたとおり、感染ゼロではなく、機動的な感染制御であろう。つまり、ゼロコロナを看板に掲げた中国は、すでに実態としてはウィズコロナに移行しつつある。しかし欧米や日本のメディアや政策当局者の間では、いまだにゼロコロナ政策を文字通りにとらえ、その「失敗」の見通しや負の側面を強調する論調が多い。われわれの中国への見方も、閉じられたエコーチェンバーで増幅されたものとなっていないか。
今秋の党大会に向け、習近平体制は厳格なコロナ対策を続けていくだろう。しかしその手法や、宣伝文句については修正しながら進めていくと見込まれる。中国の対外宣伝に惑わされないためにも、また、中国の現状を冷静に分析するためにも、ありのままの中国のコロナ対策を直視し、精査する姿勢が大切である。
(相良 祥之/アジア・パシフィック・イニシアティブ主任研究員)
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