一方、在宅中心の勤務を続けているので、他の社員とのカジュアルなコミュニケーションは十分にとっていません。そのため、人間関係の構築を求められる場面で孤立してしまうことも。
入社1年目のSさんも不安に駆られた一人。Sさんは「オフィスなら気軽に聞けるような仕事に対する相談が難しく、そのまま聞けないで時間が過ぎてしまう」「自分は社会人として通用する存在になっているのか」と悩んでいました。
社会人になっていきなり、組織の一員であることが感じにくく、「帰属意識」ももちにくい環境が続くわけです。その点で成長が抑制され、また離職への心理的なハードルも下げているかもしれません。
勤務時間中に転職エージェントに接触…
会社の席にいないぶん、上司や先輩社員の監視の目は弱く、昼間の時間帯に転職エージェントに接触しやすい状況です。このSさんも、勤務時間中に転職エージェントにエントリー。面談も予約して、キャリアアドバイザーに相談。早々に転職を決めました。彼女が入社してからオフィスに行ったのは3回だけ。当然のように送別会もありませんでしたが、次の職場で頑張るモードに切り替わっているようでした。
ここで気になるのは、もし、Sさんが対面で働く環境で入社していたら、転職していたのかということ。Sさんに聞いたところ「わからない」との回答でした。対面で働く仕事ぶりを体験したことがないのですから、比較するのは難しいですよね。しかし、せっかく入社した会社で十分な経験もできないままに転職を決断、会社にとっても残念な人材流出が続いているわけです。これは、とてももったいない話です。
転職を決断する要因の1つとしてよく聞くのが、コロナ禍がおさまった後、リモートワークができなくなる可能性です。
入社3年目のGさんは、入社から一貫してリモート勤務。それなりに仕事と生活のリズムができてきたのもあり、リモートを前提としてマンションを購入する決断をしました。そこは、現在の職場まで通勤に1時間半以上かかる場所です。しかも、駅まで遠い。ただし、自然に恵まれ、景色も美しいので「この環境で長く時間を過ごしたい」と考えるようになったそうです。
ところが、現在の会社の社長が「コロナが終結する前に全社員が出社できるオフィスに移転する」との話をするようになりました。ということは通勤し、対面で仕事することになります。多くの会社員には当たり前のことですが、リモートネイティブにとっては「違和感のある」状況。対面がゼロとは言わないものの、コロナ前に戻すと言われたらと思うと気持ちが滅入る、ならば、できるだけリモート勤務ができる会社を探そう……そうして動き出す人が増えたりするわけです。
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