有能でも「50歳を過ぎたら」転職できない納得事情 「求人はありません」と断れぬ人材紹介業の都合
今や転職は、若い人だけのものではない。「70歳定年法」によってシニア層に対する企業の追い出しが加速することを考えると、役職定年を迎える40〜50代、定年後の再就職を目指す60歳以降の人にも関わってくる。転職市場の現状を知っておくことは、「定年格差」を乗り越えるために不可欠だ。
昨今、転職市場は「売り手市場」といわれてきた。少子高齢化で生産年齢人口が減り続け、慢性的な人手不足を抱えているからだ。しかし、コロナ禍が状況を変えた。
観光、飲食、インバウンドなどをはじめとした多くの産業が売り上げ・利益を減らし、当然のように採用を控えたからだ。パーソルキャリアの調査によると、コロナ禍がはじまった2020年の転職者数は319万人。前年に比べて約1割減らすことになった。
もっとも、新型コロナウイルスのワクチン接種がはじまった2021年の春を境にこの数字は回復基調に入っているという。
背景にあるのは、コロナ禍明けを見据え、前年に採用を抑制した分、人材の取り合いが少なからずあり得ること。また多くの産業がDXを推進。IT系を中心に産業をまたいだ人材の流動化が進んでいること。それらに加えて、テレワークが増えたことで、転職活動がしやすくなったことも大きいだろう。
同僚や上司の目を気にすることなく、頻繁にスカウトメールのやりとりやエージェントとのやりとりができるようになった。また、オフィスから離れて1人黙々と仕事する機会が増えたことで、改めて自らのキャリアを見直す機会が増えたことも後押しになりそうだ。企業側もオンラインでの面談が増えたことで、採用活動の時間とコストのハードルが低くなった。
いずれにしても、転職市場は少しずつ上向きはじめたことは確かだろう。
30代ほど転職しやすい理由
しかし、である。中高年層を切り取ってみると、また違う景色が見えてくる。
まず20代の転職案件は10%弱といったところか。意外に少ないのだ。ほとんど大きな実績を出していない20代の若年層は転職市場ではさほど重視されない。伸びしろ、つまりこれからどれくらい成長するかのみで判断される。言い換えれば、新卒や第二新卒とそれほど変わらないので、積極的に採るほどでもないのだ。
30代はどうか。実は40代とあわせて、この層が最も転職市場で人気が高い。なぜか?
30代から40代が、「即戦力である」ことに尽きる。かつてのようにじっくりと研修期間をとり、OJTも丁寧にして若手を育てるような企業は減った。そこにかけるコストも時間も余裕もなくなったからだ。だから、とにかく企業は即戦力がほしい。
30代、40代ならば、すでに前職でどれほどの実績を上げているかがわかる。スキルや知識も十分得ているだろう。とくに30代はまだ若さがある。体力、知力とともに挑戦心も強いため、持っているスキルを、また別の場所で発揮できる「ポータブルスキル」を活用する伸びしろまである。だからこそ、この年代は転職市場で最もホットな層になる、というわけだ。
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