「教育には保育園より幼稚園」と誤解する人の盲点 幼児期の「教育の質」は「遊びの質」に左右される

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今、保育園や幼稚園に「習い事」を求める保護者がふえています。何か特別な時間を設けて教室的な指導をすることを「教育」と考えているためだと思います。

正規の保育時間内に子どもたちを集めて体操や音楽、英語などの指導を行うことを「習い事的な保育」と呼ぶとすると、その実施率は、公立と私立で大きな違いがあり、認可保育園・幼稚園ともに私立のほうが高い傾向にあります。私立の認可保育園と幼稚園では、あまり大きな違いはありません。ただし、幼稚園は正規の保育時間が短いため、午後に課外活動として有料で選択制の「習い事」を取り入れている園も多くなっています。園は教室を貸しているだけで、外部の事業者が実施している場合もあります。

これに対して認可保育園は、正規の保育時間そのものが11時間(短時間認定では8時間)と長いので、課外活動をやる時間はありません。正規の保育時間内に「習い事的な保育」を行う園もふえてきています。大半が無料で実施しています。

私立の保育園・幼稚園で「習い事的な保育」や「習い事」の実施がふえているのは、保護者のニーズに合わせているためです。そのニーズはどちらかというと「習い事をさせないと周りの子に遅れてしまう」と保護者に思わせる商業ベースの空気感によるものにほかなりません。一種の「習い事神話」が広がっている状況です。

ちなみに公立の認可保育園・幼稚園が「習い事的な保育」をあまり行わないのは、「遊びを通して学ぶ」という保育所保育指針や幼稚園教育要領の理念に忠実な保育を目指している園が多いこともあります。

幼児期の「教育の質」は「遊びの質」

保育所保育指針や幼稚園教育要領が「遊びを通して学ぶ」ことを大切にしているのには、理由があります。それは、乳幼児期の子どもの発達が、子ども自身の主体的な活動によって最もよく促されることがわかっているからです。好きな遊びに夢中になるときや、友だちと一緒に遊ぶとき、子どもの心や体は最も活発に活動します。

子どもの遊びは、五感で感じること、体を動かすこと、頭を働かせること、心を働かせること、仲間とコミュニケーションをとることといった多様な活動を自然に促し、心身を発達させます。

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