大学中退し「食用バラ」で起業した女性の波乱万丈 新商品でピンチを乗り切り、年商1億円を超えた

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ROSE LABO代表取締役社長の田中綾華さん。「幸せ」をつかむためにバラ農家の道を選んだという(写真:ローズラボ)
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平均年齢67.8歳という超高齢化が進み、後継者不足、耕作放棄地の拡大など日本の農業は課題が山積みだ。この農業界で異彩を放つ10人の“ネクストファーマーズ”の物語が収録された『農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ』。職業や国境などさまざまな「越境」をテーマにしたこの書籍から、無農薬で食用バラの栽培を手がけ、起業から3年で売り上げが1億円を超えたローズラボ・田中綾華さんの原稿を一部抜粋・再構成してお届けする。

飲食店に卸している食用バラが行き場を失った

「75%……」

ローズラボを率いる田中綾華は、ため息をついた。2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店の営業自粛が拡がると、主力商品のひとつで飲食店に卸している無農薬栽培の食用バラが行き場を失った。

コロナ禍に新設された補助金の申請書を書いているとき、改めて売り上げを確認すると、3月の粗利が前年比75%減という数字が出た。想像以上の打撃だったが、田中をさらに憂鬱にさせたのは、立派に育ったバラの行き先だった。

ローズラボではバラの加工食品と化粧品も作っているが、年間27万本のバラを計画的に栽培して配分しているため、こっちがダメならあっちにまわす、というのは簡単ではない。冷凍庫のキャパシティーにも限界があり、収まりきらない分は廃棄処分にするしかなかった。

5月、余ったバラをどうにかして活用できないかと頭を悩ませながら、補助金を申請するために本社を置く深谷市の市役所に向かった。窓口はコロナ禍で混乱している人が詰めかけていて、ピリピリとした緊張感が漂っていた。そのなかで、職員は懸命に対応していた。その姿を見て田中は「こんな人たちもいるんだ」と心を動かされ、「職員の人たちに喜んでもらえる商品ってなんだろう」と考えた。その瞬間、点と点がつながった。

田中は生来の敏感肌で、コロナ対策として店頭に置かれている消毒液を手に吹きかけるとひどく痛んだ。そのことと、コロナ禍で奮闘する職員に少しでもリフレッシュしてほしいという想いが重なってひらめいたのが、多機能スプレーの開発だ。

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