大学中退し「食用バラ」で起業した女性の波乱万丈 新商品でピンチを乗り切り、年商1億円を超えた
飲食店に卸している食用バラが行き場を失った
「75%……」
ローズラボを率いる田中綾華は、ため息をついた。2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店の営業自粛が拡がると、主力商品のひとつで飲食店に卸している無農薬栽培の食用バラが行き場を失った。
コロナ禍に新設された補助金の申請書を書いているとき、改めて売り上げを確認すると、3月の粗利が前年比75%減という数字が出た。想像以上の打撃だったが、田中をさらに憂鬱にさせたのは、立派に育ったバラの行き先だった。
ローズラボではバラの加工食品と化粧品も作っているが、年間27万本のバラを計画的に栽培して配分しているため、こっちがダメならあっちにまわす、というのは簡単ではない。冷凍庫のキャパシティーにも限界があり、収まりきらない分は廃棄処分にするしかなかった。
5月、余ったバラをどうにかして活用できないかと頭を悩ませながら、補助金を申請するために本社を置く深谷市の市役所に向かった。窓口はコロナ禍で混乱している人が詰めかけていて、ピリピリとした緊張感が漂っていた。そのなかで、職員は懸命に対応していた。その姿を見て田中は「こんな人たちもいるんだ」と心を動かされ、「職員の人たちに喜んでもらえる商品ってなんだろう」と考えた。その瞬間、点と点がつながった。
田中は生来の敏感肌で、コロナ対策として店頭に置かれている消毒液を手に吹きかけるとひどく痛んだ。そのことと、コロナ禍で奮闘する職員に少しでもリフレッシュしてほしいという想いが重なってひらめいたのが、多機能スプレーの開発だ。
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