大学中退し「食用バラ」で起業した女性の波乱万丈 新商品でピンチを乗り切り、年商1億円を超えた
一方の「24」は先述したように美容成分が豊富に含まれているだけでなく、爽やかな香りを放つ。さらに、化粧品の80%は水分でできているのだが、田中はそのすべてにローズ水を使い、天然の香りや美容成分を生かしたナチュラルな化粧品を作ることで、差別化を図った。
2018年5月、バーニーズニューヨーク全店舗(銀座、新宿、六本木、横浜、神戸、福岡)で化粧品の先行発売をする機会を得た。これは、開発段階で田中が同社の問い合わせページに営業メールを送ったのが縁で、同社のバイヤーの意見も取り入れながら開発を進めたことで、実現した。
先行販売の当日、田中も銀座店の店頭に立った。バーニーズニューヨークに訪れる客は富裕層が多く、女性は化粧品にもこだわりを持っていて詳しい。田中が説明をすると、明らかに前のめりで、金額を見もせずに商品を買っていった。なかには「こんなにいい成分がたっぷり入ってるのに安すぎるんじゃない?」と言う女性もいた。そして、ひとりの中国人女性は「これを全部ください」と、店頭に残っていた化粧品、およそ10万円分を買い占めて、帰っていった。
その後、ローズラボの化粧品の評判は瞬く間に広がり、正式発売から2カ月後には伊勢丹の新宿店で取り扱いが始まった。3年目の売り上げは、1億円を超えた。
天才に勝つために、3倍努力する
それからは加工品と化粧品の商品開発に注力し、5年目の現在は加工品7種類、化粧品は13種類まで増えた。組織も大きくなり、社員とパートタイムのスタッフを合わせて、14人が働いている。コロナ禍で飲食店に卸す食用バラの需要は落ち込んだものの、ローズバリアスプレーを売り出すことでうまく補うことができた。
テレビのコメンテーターを務めるなど、今ではメディアに引っ張りだこの田中だが、1年目のつらい日々を忘れてはいない。彼女がその当時から今に至るまで、自分に言い聞かせている言葉は「天才に勝つために、3倍努力する」。自分は凡人だと自覚しているから、朝から夜まで、土日も関係なく働くことで、世の中の優秀な経営者たちとの差を埋めようと全力疾走しているのだ。
劣等感にさいなまれていた19歳は、「幸せ」をつかむためにバラ農家の道を選んだ。そして今、「仕事が楽しくて仕方ない」という。
「未来のことを考えるとワクワクして、興奮しちゃって眠れないんですよ。こんな楽しい人生が待ってるなんて、思いもよらなかった」
取材の帰り道、僕は思いをはせた。バラに囲まれて笑うひ孫を見て、田中の曾祖母はなにを思うだろう。きっと、サングラスの奥の目を細めながら、こうつぶやいているのではないだろうか。
「やっぱり、バラは女性を美しく強くするね」
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