大学中退し「食用バラ」で起業した女性の波乱万丈 新商品でピンチを乗り切り、年商1億円を超えた

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食用バラをパックに詰めて飲食店に卸すよりも、加工食品のほうが利益率が高い。大きな手ごたえを得た田中は3年目、化粧品で勝負をかけた。

先述したように、田中はアトピー体質の敏感肌で、子どもの頃から肌になにかを塗るときには成分を確認する習慣がついていた。もし肌に合わないものをつけてしまうと、痛みが出たり、ひどいときにはただれてしまうこともある。だから、大人になってからも化粧品には人一倍気を遣ってきた。その知識を活かして、自分と同じような敏感肌の人が安心して使える、無農薬栽培のバラを使った化粧品を作ろう、きっとニーズがあるはずだと考えたのだ。

切り札の「24」で化粧品に参入

田中には切り札があった。創業1年目の2015年にバラ栽培のアドバイスをくれた大分のバラ農家とはその後も親しい関係が続いていて、一緒に新種のバラを開発することになった。バラの品種改良は平均5年かかると言われている。しかし、すでにいくつもオリジナル品種の開発に成功してきたそのバラ農家は圧倒的なスピードで試作を繰り返し、田中とのコラボでは、わずか2年弱で新しい品種を生み出すことに成功した。

無農薬栽培の食用バラ(写真:ローズラボ)

田中が「24(トゥエンティーフォー)」と名付けたバラは、美容に生かすことを意識して開発したもので、一般的なバラよりもビタミンAが10倍以上、ビタミンCが2倍以上含まれている(自社栽培の他種バラと比較)。「24」という名称には、田中の想いが込められている。

「バラって、リラックスだけじゃなくて女性のやる気スイッチをオンにする効果もあると思うんです。特に女性はメイクをするときにスイッチが入るんですけど、その化粧品の香料にもうちのバラが使われていたら、女性のオンとオフをカバーできる。24時間のライフスタイルをサポートする花であってほしいという願いを込めました」

化粧品の開発というとハードルが高いように感じるが、市場規模が2兆6480億円(2019年/矢野経済研究所)と非常に大きいこともあり、化粧品の製造を請け負う企業も数多く、参入障壁は低いそうだ。「化粧品が好きな人であればそこまで難しくない」という。実際、起業から2年目の途中に「24」が完成し、3年目の6月には3商品、オイルイン化粧水とクレンジングバーム、せっけんのリリースにこぎつけた。

バラの成分を含むほかの化粧品との違いは、香りにある。化粧品に最もよく使用されているバラは、ダマスクローズ。なぜ重宝されているかというと、花びらに油分を多く含んでいて、オイルを抽出しやすいという理由がひとつ。タフな品種で、露地栽培でも育つため、海外で大量に栽培されていて、輸入しやすいというメリットもある。しかし、青くさい香りが強く、華やかさには欠ける。そこで、ダマスクローズを使う化粧品は人工的な香りを加えて合成することが多いそうだ。

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