サッカー男子代表が「メダルを逃した」根本原因 露呈した課題をカタールW杯までに克服できるか

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それでも、1968年メキシコ五輪と並ぶ銅メダルのチャンスはまだ残っていた。ロンドンで韓国に敗れた教訓を生かし、吉田や酒井は若い選手たちに当時の映像を見せて闘志をかき立てるアプローチまで試みたという。それでも3位決定戦の日本のギアは上がらなかった。

6試合出ずっぱりの遠藤が3失点に絡むなど主力の疲労困憊ぶりは明らか。久保と堂安も徹底的にマークされ、仕事をさせてもらえなかった。途中出場した三笘薫(川崎)の負傷がなければ状況が違っていただろうが、2枚看板に代わる得点源を見いだせなかったのは確か。日本は最後の最後で「選手層と総合力の不足」を突き付けられた。

「日本が勝っていくのに、まだまだ次を見越して戦えるところ(段階)ではない」と森保監督は総括会見で語ったという。だが、全試合、主力だけで戦い抜くのは不可能。五輪もW杯も上のステージで「ガス欠」を起こすのは自明の理だ。今回もできることなら、1次リーグ第3戦のフランス戦で先発をガラリと変えて、吉田や遠藤の体力を温存したかった。

ロシアW杯のときは、まだグループ突破が決まっていない3戦目のポーランド戦で、西野朗監督がリスクを冒してメンバーの大半を入れ替える大胆策に打って出た。これには結果的に敗れたものの、何とか2位通過できたが、慎重派の森保監督にそういうギャンブルはできない。であるなら、吉田や遠藤であっても柔軟に下げられるような充実した選手層を築き上げるしかない。それが1年半後に迫ったカタールW杯への宿題と言っていい。

W杯で優勝できるチームの選手との差

悲願のメダルを逃した東京五輪を経て、久保と堂安はこれから昨季と異なるクラブで新シーズンをスタートさせる。田中碧(デュッセルドルフ)と林大地(シントトロイデン)、おそらく三笘も欧州での新たなキャリアを踏み出すことになる。彼らがかつての本田圭佑や長友、香川真司(PAOK)らのように欧州トップクラブへと上り詰め、結果も出すようになれば、A代表の世代交代も一気に進むし、選手層も確実に厚くなる。

「W杯で優勝できるようなチームの選手を見ると、欧州4大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、フランス)でスタメンを張っていても試合に出られない選手がたくさんいる。日本代表もそういうビッグクラブでみんながプレーしていたら、ホントにW杯優勝を目指せる。それを目指していかないとダメだと思います」と目下、A代表のトップ下を担う鎌田大地(フランクフルト)も強調していたが、1年半で日本は果たしてどこまでその領域に近づけるのか……。すべては選手個々の成長と森保監督の采配力にかかっている。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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