「やたらと気を遣う」若者は、誰が作ったか? 尾木ママに聞く「激変した若者の10年」

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「やる気がない」「消費しない」などと、上の世代からは散々な言われようの20代。平成不況の最中に生まれ育ち、何かと“悟って”しまった彼ら「さとり世代」の知られざる生態とは? 教育評論家の尾木直樹氏と、気鋭の若者研究家・原田曜平さんが、今どきの若者について語ります。
今どきの若者はなぜ、人にやたら気を遣うのか?(写真左より原田曜平氏、尾木直樹氏)

「新しい学力観」が生み出した、すさまじい変化

原田:尾木先生はずっと若者に寄り添ってこられたわけですが、ここ5年、10年ほどの若者を見ていて、変化が起こってきたな、と思うことはありますか?

尾木:ここ10年でみると、3つくらいの変化を感じますね。ひとつ目は、大人、特に学校の先生に反抗しなくなったということ。気づいたのは2003~04年くらいだったでしょうか。

原田:それは当時の中学校、または高校生のことですか。

尾木:大学生です。振り返ってみると、きっかけは1989年改定の学習指導要領で、「新しい学力観」と言いだしたことだったと思います。それまでは、テストを受けて点数が高ければ、満点を取りさえすれば、相対評価で5がつくのが一般的な常識だったでしょ。ところが、その常識が崩れたんです。

たとえば満点を取ったA子さんと80点のB子さんがいたとします。そこで、B子さんのほうに5(の評価)がついて、A子さんに4がつくなんてことがザラに起き始めたんですよ。

何が起こったかと言うと、(授業への)関心・意欲・態度が評価項目の最上位にきて、それまで重視されていた学力の技能、得点力が最下位に位置づけられるようになったのです。

当時、文科省はそれをメディアに発表していなくて、当然、メディアもまったく報じない。だから、現場は大慌てですよ。塾などからは、テストの点はいいのに3しか取れないなどと、電話の問い合わせがいっぱい入ったり。

原田:教える側もショックでしょうが、それは、子どもたちの側も大変ですね。

尾木:そうなんです。学力観が切り替わった結果、中学生、小学生の授業では、いかに先生にいい子と思われるかという“ショー”になったのです。授業中に「ここの問題わかる人?」って聞くと、みんな「はい!はい!はい!」と、いきなり手が挙がり始めたり。

原田:それは評価をもらいたいから?

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