「やたらと気を遣う」若者は、誰が作ったか? 尾木ママに聞く「激変した若者の10年」

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LINE登場で、マンツーマンの会話まで変わった

尾木:ここ1年半ほどのこと。頭にパンチをくらうほどの衝撃を受けたのですが、大学の講義に学生のTAさん、ティーチング・アシスタントの子がついてくれることになって。で、その子と打ち合わせするのに、「何時に研究室にいますよ」とメールを入れたのね。そしたら、返ってきたのが、「その日は行けません」って一言だけ。操作を誤って、メールを途中で送ったのかと思いましたよ。

でも、そうじゃなくて。たとえば「行けません。私は何時からなら行けるんですが、いかがでしょうか」とか、「先生は何時までおられるんですか」とか、もうちょっと言ってきてくれれば、ぱっと答えられるのに、「行けません」だけで終わっちゃうわけですよ。

それに類したことがそれまでも、ゼミの学生との間でもあったんですよね。今までは1回のメールで成立した話が、3回やり取りが必要なのです。なんでもうちょっと、ちゃんと言ってきてくれないのかと。おかしいな、なんて手のかかることかと。

それが、今年の新しいゼミ生を見ていてわかったのです。4月にゼミに入ってきた3年生が10人いて、ゼミでのリサーチのテーマを決めようとしたんですね。で、しーんとしちゃってるんですよね。しょうがないからテンション上げようと、真ん中に僕が入ってハイタッチして、「わー」とか言って、強制的に上げて(笑)。

原田:ははは(笑)。

尾木:その中にひとり、明るい、ちょっと軽いノリの子がいて。その彼が、「LINE使おうぜ」とか言ったんですよ。で、みんなもスマホを取り出しそうになって。焦りましたね。「こうやって丸く輪になっているんだから、じかにいこうよ」と。

その後も、飲み会の出欠確認とか、とにかく「LINEでお願いね」とやたら使われるんですよ。それで、ようやくわかったの。「行けません」と一言だけメールが来るのは、LINEの感覚で、僕は「この時間にいるよ」っていうのをすぐに返さなきゃいけなかったんだと。

このね、「LINEの会話」。LINEのバーチャルの世界が、リアルに出て来ちゃったんですよね。

原田:確かに、手紙とかメールだと、ちゃんと理由も書いたり、長文で相手に伝えるところ、LINEだと一言、一言、返すって感覚ですよね。

尾木:ものすごく手っ取り早いし、いい面もあるんですよね。ゼミでも意見が活発に出て、それまでより早くまとまったんですよ。

だけれども、リアルに、目を見て言ってはいないじゃない。反対ではなくても、絶対的に賛成ではないとかいうのが、目を見ていればわかるじゃないですか。言語を使わないところで。特に恋をしたらそうよ。目を見ていればわかるんだから。男はだましやすいからね。

原田:ははは(笑)。

尾木:まあ、それはいいとしても(笑)。そんなんで、確実に今、変わってきている。

僕は今も最前線で学生と向き合っているし、若者論の本も何冊も書いてきましたよ。その僕が、これだけうろたえている。初めての経験ですよ。原田さんにもうちょっと早く会っていれば、もっと早く気がついていたかもしれないわね。

※この対談の後編『若者を「変な子」と見切る前に、できること』はこちら

(編集協力:加藤大貴、空閑悠、矢澤佑紀子、大塚真妃=博報堂ブランドデザイン若者研究所・現場研究員。この対談は2013年4月29日に収録しました)

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