「五輪はOK」「フェスNG」の矛盾が巻き起こす波紋 茨城県医師会の「中止要請」は妥当か不当か

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要請書を見ると、「延期」「仮に開催する場合」などのフレーズもあり、「とにかく中止してほしい」という強引なものではありませんでした。しかし、「更なる入場制限措置等を講ずる」「観客の会場外での行動を含む感染防止対策に万全を期す」という要請は、これまでの努力を無視したうえに、どんなに頑張っても対策し切れない無理難題。

「こうすれば感染予防になるのでは」「こちらはこういう形で対応します」などの建設的な言葉がないため、関係者やファンが「それはずるい」と言いたくなる気持ちは理解できます。しかし、茨城県医師会には抗議の声が寄せられているようですが、その行為は安直でしょう。

中止の判断を下したのは主催者であり、茨城県医師会らにその権限はありません。「要請」に従わなければいけない必要性もなく、圧力とはいえないのです。ただし、「感染予防のため」「医療の逼迫を防ぐ」という大義名分のもとに、今回のような「要請」をすることは、限りなく圧力に近い行為でしょう。

権力者に狙い撃ちされた音楽フェス

「圧力に近い」と言いたくなってしまう理由は、茨城県医師会のホームページの「お知らせ」を見る限り、その他のイベントに「要請」を行っていないから。たとえば、鹿島スタジアムは間近に迫った東京オリンピックのサッカー会場ですが、これに関する要請はないようなのです。

また、その他の大型スポーツイベントにはJリーグや高校野球などもありますが、これらについても要請はありませんでした。それだけにフェスへの要請は、「高齢の権力者たちによる若者叩き」「何らかの利権が絡んでいるのでは」などの疑念につながっているのです。

さらに多くの指摘があるのは、「要請書」が掲載されたページ上部に掲載された写真。茨城県医師会の会長ら3人が要請書を手に持ち、カメラ目線でアピールするような写真が掲載されていました。この姿を見た人々が「茨城県医師会のアイデンティティを誇示するために、フェスが狙い撃ちされた」と怒りの声をあげているのです。

一方、主催者の決断は責められません。「1カ月前に迫った今、これ以上の対策はできない」「会場外の行動まで対策できない」「これ以上の対策をしたら採算が取れなくなる」「要請をスルーしてクラスターを出したら責任が取れない」などと考えるのは当然であり、興行として成立しづらくなってしまった以上、仕方がないでしょう。

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