「五輪はOK」「フェスNG」の矛盾が巻き起こす波紋 茨城県医師会の「中止要請」は妥当か不当か

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そのほかでは、King Gnuの井口理さんがツイッターに、「今この国にあるのは曖昧なルールと同調圧力。それで守られる人もいれば、殺される人もいる。誰かが不幸になるんじゃなくて、みんなで幸せになる方法はないのかな」とコメント。

sumikaの片岡健太さんもツイッターに、「夏のロッキン 正直、経緯に憤りや虚しさはあります。誰より来てくれる人の事を考え、誰より出演者の事を考えてきたはず。近くで見ていた 一年後、嫉妬するような共演者のライブを見てから泣きたい。そして同じステージにしっかり立てる俺達でいたい。夏のひたちなかで再会しましょう。約束」とコメントしていました。

どちらも「怒りを押し殺して冷静に語ろう」という姿勢が見られますが、けっきょく怒りを消化できていない様子が伝わってきます。2人のような有名人の立場から、怒りのニュアンスを交えて発信するのなら、もっと具体的かつ建設的なコメントが必要でしょう。

誰かに怒りをぶつけても意味がない

たとえば、「そろそろ重視する指標を感染者数ではなく重症者数と病床使用率に切り替えて、コロナとつき合っていく形に変えられないか」「軽症者や無症状者への対応を変えて医療従事者の負担を軽減できないか」「イベントでは新たにこういう形の感染対策をしてはどうか」などと提案する。

あるいは、「ファンのみなさんとフェスを開催できる方法を一緒に考え、共有することで実現にこぎつけよう」などとポジティブな一体感を生み出して対抗していくことも1つの方法でしょう。

現在の世の中で、自ら発信する有名人に求められているのは、感情を吐き出すのではなく、冷静に頭を働かせて行動につなげていくこと。その点、たとえインスタグラムのストーリーだとしても、「みんな怒るよ」は、あまりに幼さを感じさせるフレーズでした。

また、チケットを入手していた人の中には、医師会への猛抗議を行っている人もいるようですが、それも幼い思考回路の人間のすること。不安な地元住民や医療従事者、苦渋の決断を下した主催者などの気持ちを思えば、安直に誰かを責めることはできないはずです。

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それでも怒りをぶつけ続ける人は、「もしフェスが開催されていたら、ルールを守っておとなしく見るとは思えない」「大騒ぎしてクラスターを発生させるのではないか」と思われてしまうだけでしょう。

つまり、非常事態が続く今、「誰かに怒りをぶつける」という行為だけでは何も解決できず、気持ちが晴れることもないのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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