「子どもが勉強してくれない」親側に見える大問題 上辺しか見ない親の言葉は永遠に響かない

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次に、お子さんが置かれている状況を推察してみましょう。

「中3になって、周囲が勉強を本格的に始めた。そこで今まであまり勉強してこなかったクラスメイトが勉強するようになって、相対的に自分は伸びていないという感覚に陥り、自己肯定感を凹ませる『勉強』に対して強い嫌悪感を覚えた」

といった可能性はないでしょうか。

もしそうであるなら、自分自体が伸びていないというのは感覚であり、錯覚であるといえるでしょう。これまで頑張って身につけてきた実力は簡単に落ちることはありません。今の状況は、心理的な落ち込みが始めにあり、その結果、勉強という行動を取らなかったために、やらなかった分野の点数が落ちているといった経緯であることも考えられます。

ここから見えてくる子どもへの対応は、「勉強をやらせること」ではなく、「勉強に近づきたくない気持ちを緩和させてあげること」になると筆者は考えます。

親が今できること

こうした中で親ができることは、「子どもに頑張ってほしいという期待」を語るのではなく、「話を聞いてあげる」ことではないかと思います。

しかし、思春期ともなれば、「うちの子はあまり話さないので、聞いてあげようと思っても話をしてくれない」というケースもあります。そのような場合は、「雑談する」のがきっかけになるかもしれません。

「そんな簡単なこと……」と思われるかもしれませんが、雑談には、私たちが思う以上に深い意味とメカニズムがあるのです。

人間関係の土台は、「信頼関係の構築」であると言われています。そして信頼関係ができれば、人の指示や助言を受け入れられるようになるとカウンセリングなどの心理の世界では言われています。そして信頼関係の強さは、コミュニケーションの量に比例して強くなります。ですから「コミュニケーションをしっかりとりましょう!」と一般に言われます。

しかし、ここからが重要なのですが、あまり語られないことがあります。それは、親子のコミュニケーションでは「勉強関係」を話題にすると、いくらコミュニケーションをとったところで信頼関係の構築には貢献しない可能性があるということです(もちろん、子どものほうから切り出してきたときはその限りではありません)。

なぜなら、家庭において勉強の話は、“下の立場”に置かれている子どもにとっては“業務命令”のように聞こえてしまうからです。命令の前に信頼関係が必要なのに、コミュニケーションのテーマが「命令関連」であれば信頼関係の構築どころか、関係破壊を起こしかねません。

そこで、コミュニケーションの中身を「雑談」にします。すると、雑談には上下関係がありませんから、お互いがフラットな関係になり、相手は胸襟を開いていきます。

このような雑談をしている中で、子どもから勉強について触れてくるときがあります。そのときは、「伝聞形」で答えていきます。つまり、親が自分の意見や考えを直接伝えるのではなく、第三者から聞いた話として伝えてみるのです。

「○○みたいなやり方するといいらしいよ〜」や「中3のこの時期ってみんな同じような気持ちになると聞いているよ」など、本来親として言いたいことを、伝聞形で伝えることで、面白いことに受け入れる確率がグッとあがります。

以上をまとめると次のようになります。

「話を聞くことを中心にコミュニケーションをとり、その話題は『雑談』にしておく。子どもから勉強に関する話題が出てきたら、よく話を聞いてあげて、アドバイスがあれば『伝聞形』で伝える」

この方法で100%うまくいくと断言はできませんが、筆者の経験上は、高い効果がありました。受験を控えた中3生の不安は小さくありません。少しでも緩和ができれば、子どもは自主的に勉強へと向かうようになっていくと思います。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育専門家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4500人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、カフェスタイル勉強会Mama Cafe(累計1万3千人のママさん参加)、執筆、講演を精力的に行う。教育学修士(東京大学)。著書に『子ども手帳』『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』『子どもを育てる7つの原則』など国内30冊、海外13冊。音声配信Voicyでは「子育てランキング1位」の人気パーソナリティを務めている。

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