味の素が流した、「とんでもない」性差別CM 「食事はお母さんが作る」は当たり前ではない

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などと思っていたら、連載を読んだ友人がとんでもないCMを教えてくれました。少し前のものですが、YouTubeの味の素KK公式チャンネルに載っていたCMです。残念ながら、7月いっぱいで公開が終わってしまいました。

CMは、あるご家庭の1日を描いています。主人公の女性は朝起きて、すぐに子どもたちの朝食とかわいいお弁当(キャラ弁)の準備をします。一方、夫と思われる男性は後ろで何もせずに、パソコンをいじっているだけ。その後、女性が洗濯物を干し、子どもを着替えさせているので、専業主婦かと思ったら、スーツ姿で3人乗りの自転車で保育所に駆け込み、あくびをしながら通勤電車に乗り、仕事をし、さらに保育所→スーパ→自宅で、父親のいない夕食を食べる。

この人、スーパーウーマンです。こんなことが毎日できると思いますか? まぁ、時短を取られているのかも知れませんねぇ。でも、仕事をしながら、朝食もお弁当(そもそも保育所ではお弁当は原則不要です)も夕食も全部作って、その片付けに洗濯もとなると、自分の時間はゼロでしょう。過労で倒れたりしないかと、心配になってしまいます。それに、そもそも、あの男性はなぜ、何もせずに後ろに座っていられるのでしょう。

「私作る人、僕食べる人」というハウス食品のラーメンのCMが問題になったのは1975年のこと。反発があって、2カ月ほどで放映中止になりました。当時小学校6年生だった私は、「なぜこのCMが問題になるかわかる?」と親に聞かれて、「料理を作るのは女性だと決めつけてるから」と答えた記憶があります。

「お母さんが作る」は当たり前ではない

あのCMが、もうほぼ40年も前のことです。そこで今回の味の素のCMを見ると、この40年間で結局男性の家事参加は進まず、女性は仕事と家庭の両方を担当しなければいけなくなったという、いわゆる「女性の二重負担」が生じたことがわかります。

味の素のCMが特に悪質だと思うのは、(実態を検証しようのない)石器時代まで含めて、昔の光景を動画で再現しつつ、母がごはんを作るということが、世界中の歴史の中で常に普遍的だったというイメージを与えかねない点です。これでは、母親が食事づくりから逃げる道はどこにもない、と伝えていることになります。

北欧に行けば料理をする男性はたくさんいるでしょうし、最近の中国の都市部では、共働きの夫婦が子どもを連れてどちらかの実家に行き、そこでおじいちゃんが夕食を作る、というのもまったく珍しくありません。

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瀬地山 角 東京大学教授

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せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

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