家電廃棄物を宝に変える「都市鉱山」で攻めるDOWA
金の7割、銅の8割を都市鉱山から産出
海外での複雑鉱産出が細ると、DOWAは都市鉱山に賭けることを決断。120億円をかけTSL炉と呼ばれるリサイクル専用炉を建設、2008年4月に本格稼働させた。これにより回収元素は小坂だけで14種類、秋田全体で20種近くに達した。廃基板、銅条材、リードフレーム、排水スラッジなどを独自のノウハウでブレンドして炉に入れ、現在では同社の金で7割、銅で8~9割を都市鉱山から生み出している。
金属を取り出す過程は、まず原料を石炭などと攪拌して摂氏300度で融解、比重の軽い鉄やシリカ、アルミを浮かせて取り除く。沈んだ重金属のほうは硫酸の液で溶かす。溶けた銅は電解採取され、金や銀は溶解残渣として取り出し、電気炉、酸化炉などを経て各元素を回収する。
当初、新型炉の操業度は計画を大きく下回る滑り出しだった。鉱石と違い、相手はゴミの山。手間が増えれば採算割れ。09年度は71・8%の計画に対し60%程度で推移した。だが試行錯誤の結果、足元では7割水準にまで挽回してきている。
一方で、来年1月には新たにニッケルの回収も開始する。「設備に加え、法的な許可などの対応を進めているところ。今後も多くの金属を取り出す方向で製錬所の設備能力を拡充していきたい」と島田和明・小坂製錬社長は力を込める。
それはいわば、DOWAグループによる秋田リサイクルコンビナートの完成図だ(図上参照)。さまざまなゴミを扱い、解体などの作業も必要となるため、グループで産業廃棄物処理をできる強みが出る。また、銅製錬と亜鉛製錬という異なる炉の連携プレーで効果が生まれるのだ。