家電廃棄物を宝に変える「都市鉱山」で攻めるDOWA
電子基板やリードフレーム、銅条材などのうず高い山。これら廃棄物を資源に変える壮大な実験が今、秋田県小坂町で進んでいる。
ここ小坂の伝統ある鉱山を一大リサイクルコンビナートに変貌させたのが、DOWAホールディングスだ。大量の廃家電からレアメタルを回収し再利用する「都市鉱山」への期待が急速に高まる中、この資源リサイクルで先頭を走るDOWA。国内ではニッケルなど回収元素の種類を増やし、新たに中国でも家電リサイクルに乗り出そうとしている。
「脱・鉱石」を牽引する 小坂鉱山の経験と実力
都市鉱山が注目を集める理由の一つが、資源価格の値上がりだ。この1年で銅も亜鉛も価格は倍以上。中国を中心とした需要爆発で原料価格が高騰、製錬事業は採算が急激に悪化している。
銅製錬は溶錬費と精錬費で成り立っているが、これが大きく引き下げられている。新年度の買鉱交渉は、豪BHPなど資源大手の強硬な姿勢に屈し、製錬マージンは前年比4割近く下がってしまった。
資源争奪戦が熾烈化し、レアメタル確保が困難になる中で、DOWAが掲げるのが「脱・鉱石」だ。都市で廃棄されるハイテク製品は、銅、金、銀、レアメタルなどを豊富に埋蔵する新たな鉱山である。かつて、別子、足尾とともに国内3大銅山として栄えた小坂。ここがDOWAの心臓部であり、世界に例を見ない銅製錬のリサイクル専用炉を持つ。
かつて小坂鉱山は「黒鉱」と呼ばれる複雑硫化鉱の産出で有名だった。銅品位は低いが金や銀を豊富に含んだ鉱石で、これを製錬し貴金属類を取り出すことで技術が鍛えられた。閉山後も、海外から買う鉱石は製錬が難しい複雑硫化鉱だった。
競合他社の製錬所は臨海地域に立地し効率よく銅を製錬できる。それに対し、内陸の小坂製錬は輸送コストがかさむため、手間をかけて金や銀を取り出す複雑鉱を扱い、付加価値を高める選択肢しかなかったのだ。