進化か変異か?変わる「ニッポンの夫婦」の今 共働き、主婦、主夫家庭、それぞれの均衡点

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離婚にまで至らなくても、もやもやと不満を抱く妻は少なくありません。特に近年、増えている共働きの妻の多くは、共通した「もやもや」を抱えています。東京都板橋区の大原社会教育会館で、働くことと育児をテーマにした区民参加の講座を担当している大野寧子さんは、同じ地域に住む母親たちの変化を見てきました。

この講座は公募で集まった区民がテーマを決め、講師や切り口を考えるゼミのような勉強会を開くとともに、詳細につづられた発言記録を読み返すことで、自分の本当の気持ちを発見していくという独特の形式を取っています。

「6年前に講座を企画したときは、参加者のほとんどが主婦の方でした。『子どもが小学生くらいになって少し手が離れてきたので、社会とかかわりたい』という感覚の方が多かった。ところがここ1~2年は出産後も働き続けている方の参加が増えてきました」(大野さん)。

通勤事情がよい地域なので、共働きの増加は納得がいきます。私は2年前、こちらの講座の1コマでお話をさせていただきました。参加者のほとんどが育休中の働く母親で、女性にとって「働くこと」はずいぶん「当たり前」になったのだな、と思いました。

現代の共働き夫婦の共通点

講座に参加する女性たちの状況を概観すると、次のことが言える、と大野さんが教えてくれました。

1) 妻たちが仕事を続けるのはかなり自然になった
2) 夫たちが休日に子どもと遊んだり、料理をしたり、朝、子どもを保育園に送ることは珍しいことではなくなってきた
3) 夫は定時退社が難しく、保育園のお迎えや夕食つくりは依然として妻の仕事という家庭がほとんど
4) 夫にキャリアを犠牲にしてまでイクメンになってほしいとは思っていない妻が多い
5) 一方、夫が飲み会や出張に当たり前のように行くのを見て、もやもやを感じる妻は少なくない

大野さんのお話を聞いて、女性の社会進出が進むのに、男性の家庭進出が追いついていないという、日本全体に共通する課題が、わかりやすく表れている、と思いました。

「日本全体」と言いましたが、これは決して、日本だけの問題ではありません。私は2006~07年にかけて、アメリカで共働き子育てについて調査研究を行いましたが、同じような問題を論じた本や論文が数えきれないほどありました。

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