進化か変異か?変わる「ニッポンの夫婦」の今 共働き、主婦、主夫家庭、それぞれの均衡点

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中でも印象に残っているのがカリフォルニア大学Hastings校のジョアン・ウィリアムズ教授が言う「Ideal Worker Norm(理想的な労働者の規範)」という概念です。

理想的な労働者は仕事以外の(家事や育児や介護のような)責任を担っておらず、自分が持つすべての時間を仕事に投入することができます。理想的な労働者は雇用主の求めに応じて長時間労働ができるし、求められるままに、いつでもどこでも行ける、というわけです。読んでいて「これは日本と同じではないか」と思ったものです。

大統領候補に女性の名前が挙がるような国で、いまだにこんな常識が流通していることに驚きました。でも、これは事実です。アメリカで読んだ共働き家族に関する文献には、日本で見聞きするのと同じような問題が描かれ、現地でインタビューした働く母親たちは、日本の働く母親たちとほとんど同じ不満を口にしました。

いわく「うちの夫は確かに育児をよくやる。でも、子どもが熱を出したときに対応するのはいつも私」(30代の女医)、「夫は2だけ家事をやったら、200くらいやったつもりになる」(50代の教師)といった具合に。

外国にもパラダイスはない

日本の家族や夫婦のあり方を論じる際、欧米各国の様子が引き合いに出されることは多いのですが、こうした取材を通じて「どこかよその国にパラダイスがある」という発想は、やめたほうがいいと感じています。

たとえばワーク・ライフ・バランス先進国として知られるノルウェーでも、つい数十年前までは今と全然違う状況であったことを、ジャーナリストの三井マリ子さんが『ノルウェーを変えた髭のノラ~男女平等社会はこうしてできた~』(明石書店)で詳しく記しています。役員に占める女性比率を4割にするといったノルウェーの最近の動向を見て、そういう主張が通る社会をうらやましく思うことは確かにあります。でも「うらやましい社会」は一朝一夕にできたものではありませんし、国民が黙っていて与えられたものでもないのです。

日本と海外、家庭と社会。目の前と遠い先を見比べつつ思うのは、やっぱり身近なところから変えていくのが、一見、遠回りかもしれないけれど、いちばん近道ではないか、ということです。

隠れた離婚原因、妻から夫への「過剰な要求」

こういうテーマで取材し、書きながら、いつも考えるのは、自分自身の言動を振り返って反省することが多い、ということです。私の場合、産後クライシスとは無縁でした。家事育児を当たり前のように分担し、保育園の送迎も夫婦で半々。6歳の息子はつい最近まで「パパと結婚してるの♡」と言っていたほど。そんな私が「これは、まずい…」と思ったことがありました。

次ページ背景に、「イクメン幻想」
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