進化か変異か?変わる「ニッポンの夫婦」の今 共働き、主婦、主夫家庭、それぞれの均衡点

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離婚は必ずしも妻からの申し立てに限らない、ということです。「共感できないと代理人は引き受けない」という弁護士の上野さんの、クライアントの3割は男性ということです。つまり夫から妻への離婚申し立ての中に、自身が2児の母である上野さんが共感できる事例が少なからずある、ということになります。

典型例として挙げられたのは、「妻から夫への過剰な要求」でした。たとえば家庭にもっと時間を割くため転職までした夫の育児を、妻が延々、批判する。オムツの換え方、洗濯の仕方。夫を責める妻のほうは就業していない……。

「『私は子どもの世話で大変』という妻側の言い分も、私自身の経験としてよくわかるし、夫側がそれをわかってくれないのは問題だけれども、外で働くことだって楽ではない」(上野さん)。妻が就業していないと、働くことの大変さへの理解が及ばないことが多いそうです。

「背景に『イクメン幻想』があるのでは」と上野さんは推測します。家事や育児を積極的にやるいい夫像が広まるにつれ、目の前にいる自分の夫への不満が募ってしまうとしたら、それはとても不幸なことですし、私自身は夫への「過剰な要求」を思い返し、大いに反省しました。

上野さんは続けます。「夫婦だけのときと出産後では、家庭内の人間関係が変わります。産後クライシスで問われるのは、新しい構成員が加わった後で、人間関係の再構築ができるかどうか、ということではないでしょうか」。

次回以降は、夫婦の実例をご紹介していきます。「産後クライシス離婚一歩手前」の危機的な状況から「もやもやの解消」まで。そして、夫が何もしていない事例から妻の要求過剰まで。一言で「夫婦のすれ違い」と言っても、実態は多様です。「これなら私も/僕もできるかも」と改善の一歩を踏み出せるような内容にしたいと思います。青い鳥は海の向こうにいるのではなく、あなたと、あなたが愛する人が一緒に作ることができるものではないか、というのが、本連載のポリシーです。

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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