日本人を襲う「産後クライシス」の衝撃 なぜ妻たちは豹変するのか?

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「出産は、家族の幸せの始まり」――。日本のメディアはこれまで、そうしたイメージをある種”無邪気に”発信してきた。
だが、NHKの朝の情報番組「あさイチ」取材班が取材した現実は、そんなに生易しいものではなかったという。
いったい、日本の「産後」に何が起きているのか?産後の現実を、『産後クライシス』という書籍にもまとめた坪井健人ディレクター、内田明香記者が、今後、数回にわたってレポートする。
日本人の離婚の最大原因は「産後クライシス」かもしれない (写真:藤田麻生/アフロ)

豹変した妻、おびえる夫

朝食を終えたリビング。妻は寝起きのままのパジャマ姿で子どもを抱えて、疲れた目でテレビのワイドショーを見ている。

見るからに不機嫌な妻に気を遣い、テーブルの上の皿を全部、台所に持っていく。台ふきでテーブルを少しふいて、洗い物を始める。最近、皿洗いをするときは、裏側に油分が残っていないかなど、すみずみまで意識をめぐらせて、慎重に行うようになった。

さて、皿洗いはだいたいできた。後は排水溝のヌルヌルをとって終わろう。

それを見ていた妻。突然、何かのスイッチが入った。

「排水溝のヌルヌルの取り方が違う! 何度言ったらわかるの。やり直してよ!」

「!?」

やむなくもう一度、やり直した。しかし、その途中で妻がまた一言。

「本当に下手! やっぱり、もういい。後で私がやるから、そのままにしといて!!」

その後のことはあまり覚えていない。ただ、すさまじく長い間、堂々巡りの口論をしたような……。

なぜ、彼女はせっせと家事をこなしている夫(私)にいらだち、排水溝の洗い方ひとつで、こんなにも不機嫌になれるのだろう。彼女は昔からこんなふうだったのか。何が彼女をこんなふうに変えてしまったんだ? いったい、何が?

産後、消えていく夫への愛情

これは私が取材した、ある夫婦の朝の風景です。

夫はなぜか不機嫌な妻に、どうにか気を遣おうとしていますが、妻はそんな夫にいらだつばかり。全身全霊で、夫への不満を表現しています。

夫によると、もともと夫婦仲は非常によかったといいます。それなのに、いったい何が原因で、こんなにも殺伐とした関係になってしまったのでしょうか?

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