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「日本版排出量取引制度」が2026年度に本格スタート/CO₂削減効果や産業競争力への影響は?/京都大・諸富教授に聞く

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製鉄をはじめ、多くの産業がCO₂排出削減対策を迫られる(写真は、日本製鉄の東日本製鉄所(君津地区)の熱延工程)(写真:編集部撮影)
日本版排出量取引制度が2026年度から本格的な実施段階(いわゆる第2フェーズ)に移行する。これまで試行段階にあったが、今般の第2フェーズでは二酸化炭素(CO₂)排出量の上限(排出枠)を企業ごとに定めたうえで排出量の削減を義務づける。実際の排出量が排出枠を超過した場合に、その企業は対価を払って排出量取引市場から排出枠を購入しなければならなくなる。
排出量取引制度は、CO₂排出量に応じて課税する炭素税と並び、カーボンプライシングの代表的な手法として、これまでに欧州連合(EU)やイギリス、中国、韓国、オーストラリアなど数多くの国で導入されてきた。日本版排出量取引制度は、CO₂削減にどこまで寄与するのか。また、産業への影響はどうなるのか。経済産業省・排出量取引制度小委員会で委員を務める、諸富徹・京都大学教授に聞いた。

――諸富さんは環境経済学の専門家として、長年にわたってカーボンプライシング導入の必要性を提唱してこられました。このたび日本でも、排出量取引制度が日本版カーボンプライシングの一手法として本格的に導入されることになりました。どのように受け止めておられますか。

私も参加する政府の審議会で、2025年12月までに同制度の詳細な内容が決まった。EUや韓国、オーストラリアなど先行する各国・地域の事例からも学んでおり、しっかりした内容になっている。

排出量取引制度に関する議論が政府内で始まった15年ほど前、産業界は「統制経済をもたらす制度だ」として全面的に反対し、まともな議論にならなかった。そうした時代を考えると隔世の感がある。経産省は産業側の事情に配慮しながら、時間軸を通じて厳格化していくという制度設計にしたと言える。

詳細を見ると、CO₂排出削減を促す一方で、産業界への配慮も見られる。例えば、企業の研究開発投資に対する割り増しの排出枠の配分や、EUも実施している国際競争力への配慮措置などが、日本版排出量取引制度の特徴として指摘できる。他方で、企業に削減努力を促すインセンティブ設計も盛り込まれている。

ベンチマーキング方式とは?

──業界ごとに「ベンチマーキング」という方式が導入されました。同じ業種のうちで上位企業における一定水準の排出量の原単位をベンチマーク(基準値)として設定し、これに基づいて各企業に排出量を割り当てるという方法です。ベンチマークに満たない企業は追加的な削減努力を求められます。これにより排出削減は進みそうですか。

当初の削減の取り組みはゆっくりしたペースになるのではないか。例えば電力業を取り上げてみた場合、火力発電のベンチマークは火力発電全体を1つのものとして捉えたうえでその排出実態に基づいて平均したものではなく、石炭、石油、LNG(液化天然ガス)など燃料種類別にベンチマークを割り当てる。

ベンチマークを全火力平均にした場合、石炭からガスなど発電時のCO₂排出量の少ない燃料に転換するインセンティブが働く。しかし、今回はベンチマークの設定を燃料種類別にすることで、燃料転換は進みにくい。既存の発電事業に配慮した形だ。

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