コロナ会議「議事録不開示」の筋が何とも悪い訳 政府は10年前の「約束」を平気で破っている 

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「基本的に政府の方針としては議事概要のほうで公表させていただいて、一人ひとりのご発言を特定することに、それほどの意味があると思っていません」

個別の発言内容を知ることは、人によって意味合いが違う。記録として知りたい人、興味をもってこの問題を考えたいとする国民、どのような知見を基に政府に提言をしているのかを医学的な観点から知りたい専門家や医師、それに加えて各メディアにも、それぞれの目的があるはずだ。知りたい理由も状況も背景も違うはずなのに、「それほど意味があると思っていません」と断じてしまう厚労省の役人の見識に絶望感さえ覚える。

そして、役人言葉の弁明が続く。

「専門家会議に関しましては、議論の中身ですとか国民の皆様へお伝えすべきことというのは、こうした先生方に中身を詳細に、こうした資料も用意してご説明をいただいているというような状況でございますので、基本的には内閣官房が事務局をやっているのですけども、こういった形で中身をご説明させていただくことができそうだというふうにわれわれとしては考えて、このような扱い(議事概要のみの公表)にさせていただいているところでございます」

10年前の「約束」はどこへ行ってしまったのか

話している言葉は丁寧だが、意味がよくわからない。要するに、「この会見の場で検討内容を説明しているのだから、それ以外のことは知らせる必要がない」ということなのだろう。あの10年前の「約束」は、どこかへ消えてしまったかのようだ。

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6月に専門家会議が廃止され、変わってできた分科会でも、厚労省に設けられた専門家によるアドバイザリーボードも、議事録の公開については否定的だ。そのボードの運営要領には、こうある。

「審議内容の公表は、(中略)発言者及び発言内容を記載した議事概要によることとする」

そして分科会も、「議事概要とは別に速記録を作成し、各委員の確認・校正を受けて保存する。 速記録については非公表とする。なお、保存期間は10年とし、歴史的緊急事態に該当するため、保存期間満了後は国立公文書館に移管することとなる。移管後は原則公表扱いとなる」

人類が、その英知を集めた戦いを繰り広げているときに、10年先に公開では、その意味が薄れてしまう。国が非常事態を迎えたいま、その舵取りを任せた組織に信を置くことができるかどうかのバロメーターの1つに、議事録の公開があるはずなのだが。

辰濃 哲郎 ノンフィクション作家

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たつの てつろう / Tetsuro Tatsuno

1957年生まれ。慶応義塾大学法学部を卒業後、朝日新聞社に入社。支局、大阪社会部を経て、東京社会部で事件担当や遊軍キャップ、デスクなどを務める。2004年退社。主な著書は『ドキュメント マイナーの誇り―上田・慶応の高校野球革命』 『海の見える病院 語れなかった「雄勝」の真実』、共著は 『歪んだ権威 密着ルポ日本医師会~積怨と権力闘争の舞台裏』 『ドキュメント・東日本大震災 「脇役」たちがつないだ震災医療』。佼成学園高校で甲子園に出場。慶応大学では投手だった。関連して著書に『ドキュメント マイナーの誇り・上田慶応の高校野球革命』がある。

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