新型コロナウィルスの感染は続いているものの、多くの人々は「普通」の生活を次第に取り戻しつつある。そんな「ウィズ・コロナ(withコロナ)」の社会状況を前に「このまま放っておくと、格差拡大が加速する」と警鐘を鳴らす社会学者がいる。
早稲田大学人間科学学術院の橋本健二教授だ。『アンダークラス 新たな下層階級の出現』『新・日本の階級社会』などの著書を持つ橋本教授は、コロナ後のどこに危機感を抱いているのか。
「リーマンショックから何も学んでいない」
橋本教授は、資本主義社会のいちばん下に位置してきた労働者階級のさらに下に、より雇用が不安定で低賃金の非正規雇用労働者らで構成される「アンダークラス」が日本で生まれたと指摘している。これによって極端な格差が構造的に固定されるようになり、そうした状態を「格差社会」を超えた「階級社会」と定義し、その解消を訴えてきた。
橋本教授は、コロナ後の社会で最大の懸念は雇用だと言う。とりわけ、非正規労働者の状況を危ぶむ。
「(コロナで)最も被害を受けているのは、非正規労働者です。雇用がどんどん切られている。今のところは休業で済んでいる人もいますが、期限が来たら雇い止めになる人が相当程度出てくると思います」
兆候はすでに表れているという。厚生労働省が毎月発表している「労働力調査」によると、非正規労働者は近年、2100万人台で推移してきた。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令された今年4月は前月より131万人も急減し、2019万人に落ち込んだ。前年同月比で5%、前月比で6%の減少になる。非正規労働者が「雇用の調整弁」になっていることが明らかだ。
「リーマンショックのときも非正規労働者は真っ先に被害に遭いました。それが、再び繰り返されているということです。政府や企業がリーマンショックから何も学ばず、非正規労働者の身分保障を一切してこなかった、議論が全然進んでこなかった。それが露呈していると言っていいでしょう」
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