新型コロナウイルスの感染拡大で労働市場、特に非正規労働者には多大な影響が広がっている。パート・アルバイトや派遣で働く非正規労働者の数はこの10年で400万人以上増え、2019年に2165万人となっている(総務省「労働力調査」)。実際に非正社員を増やしてきたのは、どんな会社なのか。
東洋経済オンラインは昨年に続き、上場企業で働く非正社員の実態を調査した。これまで「『非正社員への依存度が高い』500社ランキング」(4月10日配信)を紹介してきたが、続いて5年前と比べて非正社員数を大きく増やした上位500社の最新ランキングをお届けしよう。
データは各社の決算期にあわせて、2018年12月期~2019年11月期と2013年12月期~2014年11月期を比較して、非正社員人数の増減数を調べた。
直近5年間は、緩やかな景気拡大局面にあったこともあり、非正社員、従業員をともに増加させた企業が多い。2020年に入り、景気後退が決定的になったことで、これらの企業がどのような人事戦略をとるのか参考にしたい。
非正社員の人数は、有価証券報告書の従業員の注記に、「非正社員」が「臨時従業員」として開示されている人数を取得したもの。有価証券報告書では、期間従業員やパートタイマーなどの臨時従業員数が全従業員数の1割以上を占める場合に、年間の平均人数を開示することが義務付けられている。
製造業は臨時従業員が多いものの、直近あるいは5年前のいずれかの時点が、全体の1割に満たない人数だったために開示されておらず、ランキングの対象外になっている場合もある。
製造業では期間従業員の人数が増加してきたが
ランキング1位はユニクロやジーユーなどの衣料品店を展開するファーストリテイリング。5年前比で5万5053人の増加だった。
2位はイオン。3万8817人の増加だった(昨年は7万0343人の増加で1位)。非正社員数26万3173人は絶対数の多さではトップだ。同業のスーパーマーケット各社を子会社化して、売り上げ規模を拡大したのと同時に、従業員数、非正社員数ともに急増した。
5位のマルハニチロはグループ内主要6社が統合し、「マルハニチロ株式会社」に商号変更したことで、5年前比で大きく増加した結果となった。これは組織構造の変化によるもので戦略的に非正社員数を大きく拡大したわけではないことは注意されたい。
製造業に注目すると、正社員と比較して、期間従業員を大きく増加させてきた傾向がみられる。景気の波によって生産量が変化する製造業では、生産量を増やすために、正社員を増やせば、需要の悪化で生産量を減らさなくてはいけないときに雇用調整が難しくなる。
こうした生産量の変化を懸念して、期間従業員を増やしてきたが、今般の影響で生産ラインが停止し一時帰休を余儀なくされている企業も続出している。
小売業界においても、緊急事態宣言に伴い一部店舗で当面の間、休業や営業時間短縮を実施しているところも多い。コロナショックの影響が今後どのような形で出てくるのか注視が必要だろう。