iPhoneの絶妙なデザインの裏に透けるこだわり ジョブズは大量生産の工業製品で美を体現した

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「デザインとは単にどのように見えるか、どのように感じるかということではない。どう機能するかだ」スティーブ・ジョブス、1988年10月12日(撮影:小平 尚典)
いまもなお語り継がれる伝説の経営者であるスティーブ・ジョブズの知られざる姿を、若き頃から彼を撮り続けてきた写真家の小平尚典と、あの300万部を超えるベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』を著した片山恭一がタッグを組んで描く連載。第8回をお届けします(毎週月曜配信予定)。

8 リンゴをデザインする

エデンの園に1本の木が植わっている。アダムとイブは神から、「園にある木の実はどれでも好きなだけ食べてもいいが、中央に植わっている善悪を知る木の実だけはけっして食べてはいけない。食べると死んでしまうから」と諭される。

しかしヘビにそそのかされたイブは、おいしそうだし賢くなれそうな木の実を食べてしまう。リンゴは禁断の果実である。そして人を誘惑する。その果実を社名に、さらにロゴにまでしてしまったのがジョブズだ。

アップルⅡの開発秘話

1976年にスティーブ・ウォズニアックとアップル・コンピュータを立ち上げ、新製品としてアップルⅡの設計に取り組んでいたときのこと。ジョブズはケースを通常の灰色をした不細工な金属ではなく、流麗なプラスチック製のものにしようと考えた。

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発注されたプラスチック会社はベージュだけで2000種類もの色を用意していたが、彼はどれも気に入らず別の色を作らせようとしたという。ケースの設計変更をしたときも、角の丸みだけで何日も費やしたとか、この手の逸話には事欠かない。

同じくアップルⅡに、ジョブズは冷却用のファンを付けたくないと考えた。ファンの音によって集中力が乱されてしまうからだ。それを彼は「禅っぽくない」と考えたようだ。そこでロッド・ホルトという優秀なエンジニアをスカウトしてきて、スイッチング電源という発熱量の少ない電源を考案させる。

こうして電源装置やキーボード、スピーカーなどの必要な部品が一体となり、明るいベージュのケースに収まった初代のアップルⅡが生まれる。クールでフレンドリーなたたずまいがユーザーに好印象を与えたこともありアップルⅡは大ヒット、会社を軌道に乗せる原動力となった。

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