先輩「『組織一丸となる』って言うんだろ? まあ、よくある言葉遣いだよな」
A「具体的にどういうことをするのですか?」
先輩「新年度の訓示なんだから、『頑張ろう!』って言うつもりなんだろ」
A「この間、吉岡先生に言われたんですけど、言葉は定義できなくちゃいけないって……」
先輩「そりゃそうだけど」
A「『組織一丸となる』を定義したらどうなるでしょう?」
先輩「一体となることだろ? 脳の命令を手足が実行するみたいに、上の命令を部下が間違いなく理解して、一糸乱れずに組織的に行動する」
A「それってホウレンソウ(報告・連絡・相談)が大事、とかと通じますか?」
先輩「そりゃ、そうだな」
A「でも、ホウレンソウはあまり機能していないと思うのです」
先輩「どうして?」
A「だって、いちいち事態が変わるごとにホウレンソウしていたら、上に伝わる時間ばかりがかかって、決定が遅くなりませんか? ボクの姉は外科の看護師をしているのですけど、手術の最中に大出血が起こったときには、いちいち上に報告していられないのだそうです。それより、目の前の事態をまず解決しないと、患者が死んじゃう」
先輩「俺たちのやっている仕事は、そんな緊急性ないだろう?」
A「でも、グローバル化の中での“迅速性”は同じことですよ。『この価格でどうか?』と相手から迫られたとき、『持ち帰って、上司に聞いてみます』じゃしようがない。上司が受け入れそうかどうかを瞬時に判断して、『わかりました。それでいきましょう!』と言わないと競争に負けちゃいますよ」
先輩「現場が暴走したらどうするんだよ? それに、トップのことを、俺たちヒラが心配しても仕方ないだろう?」
A「それは、まあ、そうなんですけど……」
確実さと迅速性を求めるには官僚制が最高?
次の日曜日、Aくんは、久しぶりに吉岡先生のところを訪ねました。
A「先生は、社長が言った『組織一丸となる』ってどう思われますか?」
吉岡「訓示としてはよくある言葉だけど、実際にやるとなると、種々問題が生じてくると思うよ。Aくん、『官僚制』って言葉、聞いたことがある?」
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