阪急阪神ホテルズから火がついた、レストランのメニュー表示に関する偽装事件。「魚市場直送の鮮魚」と書かれていた食材が冷凍魚、あるいは「九条ねぎ」が普通のねぎ、手作りパンが既製品……と挙げればキリがないほど。その後、別のホテルでも続々と表示間違いが発覚。当方が衝撃を受けたのは、ビーフステーキに牛の脂を注入した牛肉を使用していたこと。ここまでくれば、悪意さえ感じます。
「もうホテルでは食べたくない」
「何気なく、食材の真偽について聞く癖がついてしまう」
と思えるくらいに、重い不祥事です。ついには世界的ホテルチェーン(リッツカールトン大阪)でも「クルマエビ」と表記しながらブラックタイガーであったと指摘が報道されました。こうした事件について
「あの事件で食品管理は強化されたと思っていましたが、変わらなかった」
と指摘するコンプライアンス関連の専門家の声をよく耳にします。あの事件とは2007年におきた、船場吉兆が百貨店内の店舗で賞味・消費期限が切れた菓子や総菜のラベルを張り替えて、売っていた事件です。
さらに贈答用商品や料理に出す牛肉、鶏肉の産地・品種偽装が判明。同社は偽装が会社ぐるみだったことを認め、農林水産省に改善報告書を提出。その後、民事再生法の適用や経営陣刷新を行うものの、結局、経営再建できずに廃業に追い込まれました。
表面的に見えてしまう、経営陣の謝罪
さて、この2つ事件は似ているように見えますが、事件と経営陣とのかかわりが少々違います。まず、
船場吉兆の偽装:コスト削減のため経営陣から指示
船場吉兆では、売場責任者だったパートが経営陣から1カ月期限を延ばして売るように直接指示を受け、賞味期限のラベルを張り替えていました。経営陣は責任から逃れられませんでした。
一方で、今回のホテルの不祥事はどうか? トップからのコスト削減のプレッシャーが現場にかかっていたのは明らか。ただ、明確に偽装しろとは言っていません。少しでもコストを落とすにはどうしたらいいのか?を考えた現場が、コストの安い食材でごまかそうと判断してしまったのでしょう。だからでしょうか。不祥事を起こしたトップがお詫びする姿勢に、
「現場が勝手にやったこと。だから、責任はない」
という雰囲気が醸し出されているように思えてならないのです。
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