まずは参加者同士による自己紹介。違う部署で面識すらない人ばかり。過去の経歴や仕事に対する価値観を披露してみると……意外なほどに、同じ会社でも部門ごとに存在する知識やノウハウ、さらに価値観があることが明らかになりました。ところが、具体的にプロジェクトをスタートすると、
「管理部門として手間が増えるので反対」
と、自分の立場でしか意見が述べられない人。あるいは、部署内でしか通じないローカル用語を平気で連発する人など、タコツボ化(視野が狭い)している会社の実情が明らかになっていきます。そこで、プロジェクトを仕切る組織横断のリーダーは、ひとつの絶対的な指示をしなければなりません。それが
・破壊プロセス
⇒固定観念やセクショナリズムを弱めるため、自分の部署の利害から考える視点を排除する
を踏むこと。こうした取り組みで成果を出したケースとして有名なのが、日産リバイバルプランで登場した、クロス・ファンクション・チームです。カルロス・ゴーン社長が日産に就任したとき、経営を再建するため、組織にとらわれることなくプロジェクトチームを編成。最近では日立製作所が、コストの構造改革をクロスファンクションなチーム編成で成果を挙げていることに注目が集まっています。
あるいは大企業だけでなく、中堅規模でもクロスファンクションなプロジェクトを数多く立ち上げて、社員たちの視点を広げる取り組みを行う企業が増えています。取材した広告代理店では、制作部門と営業部門に加えて管理部門が協力して、制作システムの「あるべき姿」を考えるプロジェクトを立ち上げ
・各部署の利害にこだわらない
・全社のために仕事に取り組む
・お互いの立場を尊重する
こうした約束ごとを徹底。プロジェクトが立ち上がり3カ月もすると、参加メンバーたちの職場での仕事ぶりにも変化が出たようです。具体的には
「他部署と情報共有することが頻繁に行われるようになった」
プロジェクト立ち上げ当初は、参加者が同じ部署の人間同士で固まり、「そんな方向性は営業部門に説明できない」などと、セクショナリズム全開の発言が目立っていました。ところが、プロジェクトを仕切るプロジェクトマネージャー(PM)のKさん(管理部門所属)が
「このプロジェクトは全社にとって役立つか、という視点で発言をしていきましょう。それでも営業部には説明できないのでしょうか?」
と発言。すると、次第にメンバーたちの視点が変化していきました。ついには「営業部にとっては変革が必要ですが、それでも取り組むべきことがあります」と身内の痛みさえ伴う取り組みにも賛成するように。明治時代になった時期に発せされた
「薩摩も長州も会津も同じ日本人(大河ドラマ 八重の桜でのあるシーン)」
ではないですが、同じ会社の一員として、一体感を持って活動できるチームに変わっていきました。彼らはおそらく、自分たちの所属部署に戻っても、こうした全社的な視点を失わずに仕事に取り組むことでしょう。こうしたプロジェクトを体験する社員が増えると社内のセクショナリズムは次第に解消していくに違いありません。
自身や所属する組織がタコツボ化していないか、常に疑い、会社全体の成長のため仕事に取り組めているかどうか、確認したいものです。
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