ただ、経営サイドのプレッシャーが不祥事を引き起こす背景にあったのは明らか。そんな状態で、社長や支配人が「偽装するつもりはなかった」と悪意を否定しつつ、「申し訳ございません」と頭を下げても、周囲の攻撃は終わらないでしょう。なぜなら、こうしたプレッシャーが消えることはなく、再び問題が起こる懸念を拭えないからです。
「持ち場」以外に興味がないという病
さて、今回のようなホテルの不祥事。対症療法でしのぐのではなく、根絶するにはどうしたらいいのでしょうか? そこで、職場の組織が抱える問題解決の視点から考えてみましょう。当方がいちばんの問題だと思うのは
《職場のセクショナリズムが引き起こした、問題を隠蔽する風土》
セクショナリズムとは、自分が所属する部門の都合や利害を優先する思考・行動傾向のこと。これが横行すると、ほかの部門が抱えている事情を配慮せず、全社的な視点から物事を考えることができなくなるため、状況の変化に対して適応力が弱まります。今回の不祥事が起きたホテルでは
・経営(コストを押さえろ)
・購買(原価を下げるため、安い食材を買うしかない)
・厨房(与えられた食材で調理するしかない)
・サービス(メニューと食材が違うけど関係ない)
お互いが自分の持ち場の役割の仕事をこなすことしか意識しない。極端に言えば、自分の所属する部門が身内で、ほかの部門は敵。
「自分のかかわる組織の繁栄だけ考えればいい。ほかの組織のことなど関係ない」
このような感覚の社員ばかりいると、不祥事に対して誰も認識しない、罪の意識がない、ゆえに誰も指摘しない状況が常態化するかもしれません。こうしたセクショナリズムは、ホテルや飲食業界だけでなく、大抵の組織で起きている問題ではないでしょうか。
・隣の部署で電話が鳴っていても出ない
・物流部門と販売部門の衝突が絶えない
・他部署の同僚に対して「あいつ」と平気で言う
同じ会社にもかかわらず、「われ関せず」「敵としか思えない」と対立関係にある状態。こうなると会社が本来目指すべきことなどおざなりになってしまいがちです。ゆえに、セクショナリズムの強い会社は不祥事が起きて、企業の成長が止まってしまうリスクが高い。大企業、金融機関、官僚組織等で縦割り組織、組織の壁による弊害……といった弊害は、すべてセクショナリズムのこと。
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