A「連絡・報告・研修ばかりで、実質的な仕事をする時間が減りそうだ……」
吉岡「特に、経営陣の危機感は問題かもしれないね」
A「え、何でですか? 危機感って大事では?」
吉岡「人間は、なるべく自分の知らないところでの失態について責任を取りたくない。だから、細かく事態を把握しようとして『もっとちゃんと報告せんか!』なんて怒る。それが中間管理職にも伝わって、部下を怒鳴りまくる」
A「下は萎縮しますね」
吉岡「もちろん、トップはホンキで組織を活発化させ、業績を上げたい。でも、その意図どおりに組織は動かない。特に中間管理職は、トップの命令を忠実に実行しようとして、あれこれいろいろ頑張りすぎて、下を縛る傾向にある」
A「そういえば『部分最適化は、必ずしも全体最適化にならない』って聞いたことあります。各自が一生懸命やったことが、必ずしも全体から考えるといい結果にならないという意味でしょ?」
吉岡「そうそう。たとえば、A君の課長さんなんかが一生懸命になって、『ちゃんと報告書を出せ!』なんて言い出したら……」
A「ただでさえ忙しいのに……」
吉岡「膨大な量の報告書が集まるけど、読みきれないので、結局、放っておく。提出のときも『まず、内容を2分以内で要約してから提出しろ!』とか」
A「むちゃくちゃだな。どうしたらいいのでしょう?」
吉岡「具体的手順を考えないで、各自が一生懸命やると、そうなりがちだね。『組織一丸となる』なんてあいまいなマジックワードを使うと、誤解されてもっと効率を落としかねない」
A「そうか、意図と反対の効果が出てきてしまうわけですね?」
吉岡「何かを伝えるということ、つまりコミュニケーションは、それなりに時間や手間がかかる。それを理解しないで適当なことを言うと、結果もムチャクチャになる。具体的手順を考え、その結果についても予想して、実行可能なプランに落とし込まないと、ちゃんとした指示とは言えないね。前に話した『コミュニケーション力』って、むしろそういう工夫ができる力じゃないかな?」
いかがでしょう? 組織がスピードと質を高めて動いていくには、上からの命令を、一人ひとりが一生懸命実行するという単純なイメージだけでは、うまく行きません。それぞれの要素が合わさると、実際にどんな効果が出てくるかを予測して、具体的プランを工夫しなければなりません。その意味で、会社の仕事は、けっこう創造的な作業なのですね。Aくんも、またひとつ仕事の面白みと難しさを発見したような気持ちになったようです。
※次回記事は5月14日(水)公開予定です。
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