ブランドの服が与えてくれる3つのもの 現代の“服"が意味すること

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それから何世紀も時代は進み、世の中に、集落や小さな国家といったコミュニティが生まれ、そこには支配者や権力者が現れ、だんだんと社会というものが出来上がりました。その社会の形成に併せ、個人にも地位や役割、ひいては職業などが付随するようになりました。そして、そのような変化とともに、服にも記号的な意味が与えられます。

つまり、“服”は、その人の社会的な身分や階級、いわば地位(ステータス)や職業を表すものでした。まさに、“人は見た目が9割”。というのは冗談ですが、実際に、服はその人の社会的情報を伝えるための、いちばん手っ取り早く、かつ重要なツールでした。

わかりやすく説明するために、極端な例を挙げたいと思います。下の絵を見てください。

 あなたは、この人物が誰かまったく知らないとします。この人はどんな人だと思いますか?

イアサント・リゴー『ルイ14世の肖像』
提供:The Bridgeman Art Library/アフロ

もし仮にこの人物が誰かわからない、という前提であったとしても、この人の身につけているものや雰囲気から、相当地位の高い人だということを想像することは難しくないと思います。そして、もしフランスの歴史に詳しい方でしたら、下記の理由から、論理的に王様だということを導き出すことも可能です。

① 白地に黒の斑点の毛皮(アーミンの毛皮)は、王族や貴族など、高貴な立場の人のみが身に着けることができた。

② 青地に金の百合の花の紋章は、フランス王室を表す。

③ 大きなかつらと赤いヒールの靴は、絶対王政時代の権力の象徴。

服飾史について紹介し始めると、どんどん話がマニアックな方向にいってしまいますので、今回はこの辺りで割愛させていただきます……。

要するに、服には“身を守るもの”ということ以外に、情報の伝達という役割がありました。繰り返しますが、さまざまな時代、多くの国々において、それは、主に身分や所属する場所などの社会的情報を表していました。

そもそも、庶民と貴族では使用する布(素材)が違いますし、服のスタイルも全く異なります。また、色による階級制度というのもありました。というのも、化学による染色技術が発達する前は、その染色の難易度と原料の希少性に応じ、位によって使用してもよい色とだめな色というのが決められていたからです。身近な例ですと、日本では聖徳太子の時代に、色で階級を表す冠位十二階がありました。さらに、いわゆる服以外の、身に着けるものも同じです。前述の靴(ヒール)、かつら、リボン、アクセサリー、装飾品(宝石類)など、身に着けるものにルールが存在する時代というのは、実は長く続いていたのです。そして、それが意味するものや伝わる情報というのは、時代や国といった歴史的背景が変わるとともに、独自のルールを書き換え、一緒に変化していきました。

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