自粛警察「市民vs.市民」が泥沼になる必然構図 正義感の暴走でコロナ後は「1億総警察官」に?

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自分たちが絶対の正義だという意識は、人間の弱い部分を刺激する(写真:アフロ)
「自粛警察」という言葉がTwitterのトレンド上位に入ったのは、4月下旬だった。新型コロナウイルスに伴う政府の非常事態宣言が出ているなか、要請に反する行動をする人たちを注意したり、時には威嚇したりする人たち。その「自粛警察」はコロナ後も社会に根を張ってしまうのか。長く監視社会の問題を追及してきたジャーナリストの斎藤貴男さんに、自粛警察の行く末に何が見えるかを聞いた。

急増した地域防犯団体

――単刀直入に、まずは自粛警察について。どう思っていますか。

「予想していたとおりです。『自粛警察』という言葉をマスメディアの記事で見て、さもありなんと思いました。でも、この程度ですんでよかったとも思いました。もっとすごいことになると思っていたんです。グループを作って襲うとか、休業中の店のガラスを割るとか、パチンコ屋から出てきたのを取り囲むとか。そういうことが、もっとあると思ってました」

斎藤さんは1990年代から監視社会や地域の自警団についての取材を続け、『分断される日本』(角川文庫)、『ルポ 改憲潮流』(岩波新書)などにまとめてきた。これらの著作では安全活動をする団体の姿や日本の各地に広がった「安全安心まちづくり」運動から見える実情などを報告してきた。

警察庁の「自主防犯ボランティア活動支援サイト」には、全国の市民防犯団体の事例が紹介されている。事例紹介ページのタイトルには「防犯にやりすぎはない」「歩く防犯カメラが合言葉」といった言葉も見られる。

警察庁のまとめによれば、防犯ボランティア団体は、2003年に3056団体。それが5年後の2008年には4万団体を超えるまでに急増した。ただ、2011年に4万5000団体を超えてからは横ばいで、2019年は4万6135団体となっている。団体の構成員数は、2014年の277万6438人をピークに減少しているが、2019年時点でも250万3358人の登録がある。

このような防犯活動をする団体の源流について、斎藤さんはこう言う。

「自警団は、警察庁が地域社会に向けて『作ってくれ』という要請を1990年代から進めるなかで急増しました。私が取材したのは、その数が急に増えたときでした。今はもう飽和状態なので数のうえでは横ばいだけど、ネットを見ると活動事例はたくさんあります。警察の下請けのようになっている団体もありますね」
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