自粛警察「市民vs.市民」が泥沼になる必然構図 正義感の暴走でコロナ後は「1億総警察官」に?

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斎藤貴男さん(撮影:木野龍逸)

斎藤さんには、強く印象に残っていることがある。

「ある団体の取材のときに恐ろしいなと思ったのは、メンバーが持っている警察手帳の偽物みたいなものを欲しがる人がたくさん集まってくる、という話を聞いたときでした。一応、代表者が参加希望者の審査はするのですが、(参加可否の決定は集まってきた相手の)印象でしかありません。
青色の回転灯がついた、パトカーそっくりの白黒塗装の車両も、警察が許さなければありえない。また警察OBの指導で刺股の訓練をしていました。警察庁の事例集でも、警察OBが指導者になっている団体があります。はっきりとした民間の組織なのか、お上の指示でやっているかは、よくわからないんですね。
自警団も、地域の人が作りたいなら、勝手にやればいいわけです。それが、なんで警察のまねみたいなことするのかなって思うんです。パトカーもどきを作って『おれたちは警察みたいなものだぞ』っていうように、権威に人間を服従させたがる意識がすごく強い。怖いことだと思います」

斎藤さんはさらに続けた。

「2001年頃、防災意識を高める流れの中で、震災時のまちづくりを掛け声にして『安全安心まちづくり大会』という催しが全国で行われていたんです。それで、名古屋で活動していた女性だけのグループ『レディ・スター』のお披露目を取材していたら、黄緑色のジャンパーを着て参加していた女性たちが、『いよッ、銃後の守り!』という掛け声をかけていたんですね。参加している人たちは、そういう気分でやっているんです」

禁煙条例で市民が“岡っ引き”に

市民による防犯活動に対して違和感を強めたのは、「禁煙条例」に関する取材体験がきっかけだったという。2003年のことである。

「私はタバコを吸いません。吸う人についても個人的に好きではないのですが、禁煙条例のように、人間の肉体の使い方に行政が介入するのはすごく恐ろしいことだと感じていました。それに、お上が『禁煙だ』と言い出すと、それに力を得て、今後は逆に、吸わない人たちが横暴になってくるっていう印象を持っていたんです。
2003年、俗に禁煙条例と呼ばれた『生活環境条例』について取材をしていました。その前年に東京都千代田区が全国で初めて、禁煙場所でタバコを吸ったら過料2000円という条例を作ったんです。このとき、どのマスコミもパトロールする側にくっついて取材していた。それで私は、パトロールされちゃう側をやってみようと思って……」
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