「こんな社会である限り、いつかまた戦争になったら、あっという間に『国防婦人会』ができるなと思いました。隣組はお上が決めた組織でもありますが、そういう組織は草の根的に発生しますからね」
「1億総警察官」の時代?
――新型コロナのワクチンができるまで、1年から1年半を要すると言われています。人口の6割が免疫を持つまで、終息しないとも予想されています。そうした中で「自粛警察」のような、他人を排除する動きはいつまで続くのでしょうか。
「政府や自治体の態度次第だと思います。『第2波、第3波が起こるのは不心得者のせいだ』という世論が作られちゃうと、エスカレートする可能性はある」
緊急事態宣言の解除後、東京都では感染者数が2ケタになる日が続き、「東京アラートを出して警戒を呼びかけた。そんななか、東京都が警視庁と協力して、夜の街の「見回り隊」の結成を検討していると一部メディアは報じた。
東京都に確認すると、6月5日に新宿区歌舞伎町で、都や新宿区の職員、東京都医師会の人たちが「東京アラート発動中」などと書かれたそろいのビブスを着て、「3密」を避けるよう呼びかけながら歩いた。その際、警視庁と活動範囲の調整はした。しかし、取材に対しては「警察と一緒にやるということはない」とし、一般市民の参加も想定していないと言う。
「しかし」と斎藤さんは言う。
「『見回る』という発想そのものに問題を感じます。見回りには『意に沿わないものを見回って取り締まる』という意思がある。
今回の緊急事態宣言も東京アラートも命令ではないので、はっきり言えば、市民はどういう対応をしても構わないわけです。ところが、(宣言やアラートの発出は)『見回る』という行為に絶対的な正義を植え付けることにつながります。今は役所だけでやっているにしても、そこに町内会や一般の人を巻き込まないという線引きはない。状況次第で変わることもありえます。
でも、市民による見回りは、危険です。お上による見回りは仕方ないと思いますが、そこに市民が入ると”市民vs.市民”という形になって、しかも見回る側には圧倒的に力があるため、市民総出でリンチをするという構図になりかねません。
自分たちが絶対の正義だという意識は、人間の弱い部分をものすごく刺激するんです。そうすると、『1億総警察官』みたいなムードが生まれ、その意識はコロナの間だけじゃなく、その後にまで強く残る。絶対正義の意識の暴走もありえます。それをすごく警戒しています」
取材:木野 龍逸=フロントラインプレス(Frontline Press)
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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp
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